プロであれば対戦相手だけではなく、チーム内の競争にもまた勝たなければならない。この状況を柏倉はネガティブに捉えてはおらず、「チームに貢献するためにどういう準備をしたら良いか、試合を見ながらもそうですし、練習など試合以外でも絶対にできることはあると常に考えています。試合に出たいし、チームに貢献したいからこそ、今は常にハングリーな状態でいられます」とむしろ歓迎していた。
篠山竜青、小針幸也、そして米須が同じポイントガードであり、「常に危機感を持って競争できていることで、より責任を持ってコート上でプレーできている要因だと自分は思います」と柏倉はチームを上向かせる。競争を促すギンズブルグヘッドコーチも、「小針選手は2試合ベンチから外れ、FE名古屋戦も出場機会がなかったが、その後の長崎ヴェルカ戦ではしっかり活躍してくれた。柏倉選手も試合中盤まで良いパフォーマンスをしていたが、そこからベンチ外になった。それでも今日(滋賀戦)は、しっかり活躍してくれている。日本人選手たちはベンチから外れても、しっかり備えられるメンタリティーがあり、そこはすごく感心している」と話し、北卓也GMにアドバイスを求めながら12人を見極めていた。
柏倉にとっては古巣の滋賀との初戦、第2クォーターにコートへ入るといきなり3ポイントシュートを決めた。「個人的にもすごく楽しみにしていた試合であり、正直言って特別な思いがありました。ネノも『ディフェンスで試合が決まるぞ』と言っていたので、ディフェンスマインドで試合に入ってチームに貢献しようと思っていました。その中で味方が良い状態でパスを出してくれて、元々空いたら思いっきり打つのが自分のプレースタイルでもあるので、最初の1本を決められたことで自分としても乗ることができました」と8点の活躍で勝利に貢献する。
川崎は伝統的にディフェンスのチームであり、柏倉にとっても「自信を持っています」と長所としている。「でも、なかなかチームルールが徹底できていない部分と、それ以前の問題であるコンタクトやインテンシティといったハードワークができていない部分がこれまではありました。ディフェンスの強度に対し、出て行くメンバーが自分からトーンセットすることを体現できてきたことで少しずつ失点を抑え、今の勝ちにつながっている要因だと思います」と川崎のスタンダードが戻りつつある。
オフェンスでは「どんな状況でも『ポイント・ファイブ』と言って、『0.5秒でしっかり判断しろ』と言われています。ボールをキャッチした瞬間にシュートなのか、パスなのか、ドライブするのかなど早い判断が求められています。最初は難しかったですが、今ではボールをもらう前から状況判断ができるようになり、少しずつ慣れてきていました」と柏倉は話すとおり、新しいオフェンススタイルが浸透してきたこともまた、ディフェンスの向上につながり、新たなトランジションバスケが体現できている。
この1ヶ月は他地区の下位チームとの対戦だった。次戦は東地区のトップに立つ宇都宮ブレックスの黄色く染まるホームへ乗り込む。ブレイブレッドに染まってきた柏倉が、現状を打破するためにもチームを引き上げて行く。
「これまでのチームではキャプテンを任されてきたからこそ、リーダーシップを発揮したいです。出ている時間帯はしっかりゲームが落ち着く、ディフェンスが締まる、という自分の長所をより体現して、チームの勝利のために貢献していきたいです」
文・写真 泉誠一