盤石な強さを見せる西地区1位の琉球だが、不用意に落とした試合も散見される。長いシーズンやEASLを通して成長につなげていかなければ、「そもそもCS(チャンピオンシップ)には出られないし、CSで勝つための良いポジションも取れない。良いバスケをしていないとチームの中で崩れる怖さもある」と桶谷ヘッドコーチは引き締める。EASLのアウェーゲームで初黒星を喫した「ニュータイペイ戦で良くなかったところを引きずったままのゲームになってしまった。もう1回、それぞれがハードアップしないとダメだと思っており、それはマインドセットのところ。体を動かすことだけがハードワークではなく、頭を動かして、チームメイトとコミュニケーションを取って、今何をすべきか共通認識を持ってやることが1番重要だと思っている」と指揮官は常に選手たちの足並みを揃えて階段を上る。
3年連続EASL出場、Bリーグを代表するトップチームだが、まだ頂点に立っていない。EASLがあることで多くの選手にチャンスを与え、チーム全体で底上げしながら、盤石な強さを求め続ける。
佐藤涼成がデビューで “強気スイッチ” オン
横浜BCは新たに2人の特別指定選手を迎えた。点差が開いた第1戦、残り1分23秒には白鷗大学3年の佐藤涼成がホームでデビューを飾った。合流したのは試合前日であり、トゥオビヘッドコーチも「まだ見ていない段階なので、どういう選手でどういう役割かはまだ言えない」というのが正直なところ。マッチアップする琉球の平良彰吾は、ディフェンスでどんどん体を当てて来た。その瞬間、佐藤の表情が変わり、いつも通りの “強気スイッチ” が入る。「フィジカル面では通用すると感じましたし、ディフェンスではもっとできたという思いもあります。ディフェンスもどんどん通用していくな、とすごく感じました」と佐藤はデビュー戦で自信をつけた。
福岡第一高校と白鷗大学のユニフォームはいずれもグリーン。横浜BCではネイビーを纏う佐藤は、「着たことがない色なのですごく新鮮に感じています」と見慣れない。琉球のスターターである脇真大を目の当たりにし、「大学時代は一緒にプレーしていて、今はプロの舞台で活躍しているのを見て、すごくうれしい気持ちと、もしマッチアップする機会があればやっつけてやるぞ、という気持ちでやっていこうかなと思います」というメンタリティがあいかわらず気持ち良い。3月5日までの限られた期間ではあるが、海賊の一員となって爪痕を残していく。
同じく1月10日に特別指定選手都市に入団が発表された東海大学4年の前野幹太。ベンチ入りこそならなかったが、「琉球であればヴィック・ロー選手が3番で出ていた時間帯に、ミスマッチにはなりますが体を張って止めるなど、アドバンテージをできるだけ小さくしていくのが自分の役割だと思っています」と試合を見ながらシミュレーションする。2つ年上、同じ東海大学出身の松崎裕樹の存在が頼もしい。「大学時代からよく話しかけてくれたり、気にかけてくれています。プレーは全く一緒ではないですが、ポジションでかぶることもあるので、裕樹さんのスタイルなどをうまく吸収して、自分の成長につなげていきたいです」とプロとして出航する。トゥオビヘッドコーチは、「オールスターブレイクで2週間ほど練習ができるので、その中で彼らがこのチームの中でどんなプレーができるかをしっかり見極めていきたい」と期待を寄せる。オールスターの宴の裏での準備や努力が、後半戦の浮上を左右する。
文・写真 泉誠一