【前編】クリニックを手始めにいろいろな活動を目指していきたい より続く
バスケのスキルも世界観も今の子どもたちは本当にすごい
── 篠山(竜青)さんは北陸高校から日本大学、橋本(竜馬)さんは福岡大大濠高校から青山学院大学。湊谷(安玲久司朱)さんは洛南高校から青山学院大学といずれも強豪校出身で全国優勝も経験なさっています。そんな自分たちの時代に比べ、今の子どもたちのレベルは上がっていると感じますか。
篠山 めちゃくちゃ上がってますね。
湊谷 何倍も上手い!
橋本 僕たちの時代とは雲泥の差があります。
篠山 だって僕たちがフローターシュートができるようになったのって高校生ぐらいのときですよ。(高校バスケ界に)長身の留学生が入って来るようになって、高さに対応するために身につけたっていうか。ジノビリが出てきてユーロステップっていうのがあるんだと知ったのが大学のときですからね。それを今の子たちは普通にやってる。すげーなって思います。バスケのスキルも世界観も僕たちの時代とは比べものになりません。
橋本 今、竜青が『世界観』と言いましたが、僕らが中学生、高校生のとき描いていたトップレベルと、今の子どもたちが描いているトップレベルとの差はとんでもなく大きいと思っています。2人のことはわかりませんが、少なくとも僕が昔描いていたトップというのは日本代表チームに入ることで、そこから先のことは考えていませんでした。世界の舞台で勝とうなんて思っていなかったし、世界に勝てるなんて想像すらしてなかったです。でも、八村塁とか渡邊雄太とかNBA選手が誕生して、今なら河村(勇輝)君もそうですけど、頑張ればNBAに行けるかもしれないっていう世界観になってきたと思うんですね。子どもたちが目指す “トップ” が大きく変わった。それってものすごく大事なことだと思っています。
篠山 僕が日本代表にいたころ、ワールドカップに出られるなんて思っていませんでしたから。
── でも、篠山さんがキャプテンとして日本代表を牽引した時期、実績もちゃんとあるわけで。
篠山 そうですね。僕たちはBリーグの創生期というか、日本バスケ界の過渡期の中でバスケを続けてきた年代ですからいろんな経験をさせてもらいました。その中で多少なりともバスケ界に貢献できたという自負はあります。それはおそらくこの2人も同じなんじゃないでしょうか。
湊谷 それは同じだけど、竜青と竜馬は今もBリーグのコートで戦い続けているわけですからね。見ていて尊敬しかありません。30代半ばまで一線でバスケを続けているって本当にすごいことですよ。よく歳をとると体力がどうとかという話になりますが、僕はメンタルの方がずっと大変でした。現役を引退したとき何が楽になったかというとメンタルの部分で、なんていうか、すごく解放された気持ちになったんですね。だから、今も人には見えないものを背負って戦っている2人を見ると、本当にすごいと思う。尊敬のひと言です。
篠山 アレク、ありがとう(笑)
── ただ、歳を重ねていくことで見えてきたものも多いのではないですか。
橋本 それは間違いなくあります。その中で僕と竜青の関係性も変わってきましたし。
篠山 振り返れば、大学時代も何かの大会の選抜チームを組むとなるとポイントガードは竜馬か僕だったんですよ。
橋本 1つしかない席に竜青が座ったら僕が外れて、僕が座ったら竜青が外れるみたいな。
篠山 だから、さっきも言いましたが竜馬のことを嫌いだったわけではなく(笑)、単純に触れ合う機会がなかったんです。
橋本 竜青~! おお竜馬~! みたいな触れ合いはまったくなかったもんね。
湊谷 けど、お互いに認め合ってたところはあるんじゃないの?
橋本 それは確実にある。だから今があるというか。
篠山 先ほど竜馬から『旬を過ぎた選手』というパワーワードが出ましたが、33、34を過ぎて自分たちの役割も変わってきた中で「歳とってきたけど、お互い頑張ってんなあ」みたいな気持ちがバチッと重なったんだと思います。
橋本 変な言い方かもしれませんが、今、川崎の試合を見ていると「あ、竜青はこんな気持ちじゃないのかな」ってわかるような気がするんです。こんな気持ちでコートに立っているんじゃないかなってなんとなくわかるんですよ。で、あとから聞いてみるとやっぱりそうだったかということが多い。