10月13日の徳島ガンバロウズとのGAME2では、ベンチスタートにもかかわらず出場時間が30分を超えた。既にしながわシティにとって落合は不可欠な存在となっていることを示すとともに、佐野HCが落合の持ち味を巧みにチームに落とし込んでいるということでもある。八王子とのGAME2の第4クォーターで一時9点差まで迫られたところから、落合がコートに立った時間帯で最後は19点差に突き放せたように、結果も伴っていることは説得力を増す。
「Bリーグで30分出たことなんてほとんどないので、未知の世界で僕も成長させてもらってます。少しうまくいかないと普通は代えられてしまうと思うんですが、佐野さんには『やり続けろ』と言われてます。5人制でも必要としてくれて、こういうヘビーラインアップの戦い方も新鮮だし、めちゃくちゃ重要な役割を与えられて、勝敗を左右する時間帯にコートに立ててるのはすごく楽しい。だからこそ、チームを勝たせたいですよね。このチームは勝てないシーズンもありましたが、今シーズンは一味違うぞというのを見せたいとみんなが思ってます」
前述した通り、落合が3×3.EXE PREMIERファイナルを戦っていた裏で、しながわシティは天皇杯に臨んでいた。その初日に、B1・滋賀レイクスを見事に撃破。かつてB3時代の長崎ヴェルカも天皇杯でサンロッカーズ渋谷を破ったことがあったが、長崎には当時からB1経験者が多く、下馬評も高い中での勝利だった。B3叩き上げとも呼ぶべきしながわシティがB1勢に勝ったことは、多くのBリーグファン・ブースターにとっても驚きの出来事だったに違いない。自身の試合のため配信観戦を途中で切り上げ、後に結果を知った落合も興奮したようだ。
「B1の選手やファンからしたら、しながわシティの選手なんて知らないと思うし、あれは最大の下剋上だったと思うんです。若い選手たちは、一つ自信になったんじゃないですかね。でも、レギュラーシーズンは違う難しさがあるので、そこをどう勝ち抜くか、それをプレーオフの短期決戦にどうつなげるかが大事。良い意味でBリーグファンを裏切りたいし、台風の目になれると思うので、期待してほしいです」
昨シーズンも20勝と白星を大幅に伸ばしたしながわシティは、天皇杯の結果を受けてさらなる躍進の可能性も感じさせる。開幕直前に本格合流した落合には、自身が入ることでその勢いを加速させなければならないという責任感も生じていた。
「それはすごくありましたね。自分が入ってもチームは変わらずではなく、それ以上にならないといけない。そういうプレッシャーもありましたが、シーズンに入ったら絶対に自分の存在価値を示していこうと思ってました。まだまだ満足はいってないので、シーズンが終わったときに『やりきったな』と言えるように、毎試合取り組んでいかないといけない」
3×3とはいえ、日本代表として東京オリンピックの舞台に立った選手を加えたことは、しながわシティというクラブにとってもあらゆる面でプラス材料になる。落合自身、ALPHAS.EXEの活動との両立で心身ともに大変な中、「会社も僕の活動を応援してくれてますし、せっかくこうやって来たからには、しながわシティを大きくして広めていきたい」とクラブの発展にも視線を向ける。落合は今、新たなチャレンジを楽しむ充実の日々を過ごしているところだ。
【前編】ALPHAS.EXE #91 落合知也
勝つために全部やる男
【後編】しながわシティバスケットボールクラブ #91 落合知也
Bリーグ復帰で担う新たな役割
文・写真 吉川哲彦