── 背負うものを重く感じた時期もあったということですか。
はい、確かにそういう時期もありました。特にBリーグが発足した前後あたりは今振り返っても結構しんどかったなあと思います。周りの期待を全部受け止めて、その期待に全部応えなきゃいけないと思い込んでいたんですね。だけど、時間が経つにつれ、いろんな期待を1人で背負い込まない方法というか、解消できるスキルというか、そういったものが身に付いていった気がします。今では頼りにされていることが嬉しいし、ありがたいと思えるようになりました。それに僕はコートに出たら試合を楽しみたいという気持ちの方が強いんで、プレッシャーがかかっている部分とその瞬間を楽しみたいという部分が両立できたとき、1番いいパフォーマンスができるような気がしています。
── 岸本さんには『ここで欲しい1本を決める選手』という印象が強いです。そこは自分でも意識しているところですか。
いやいや、意識していませんし、そういう局面で「俺が決めてやる」と思ったことはないですね。むしろ自分がそう思って打ったシュートは入らないことの方が多い(笑)。いい意味でそこまで深く考えずに打っていると思います。ありきたりなことを言えば、そういう局面をイメージした練習は普段からやっていますので、試合でそれが活きたということでしょうね。
── 勝手なイメージで申しわけないですが、岸本さんが険しい顔で後輩たちに喝を入れている姿が想像できません。たとえば集中力を欠いていたと感じる試合のあととか緊張感が足りない練習のときとか、ドカンとひと言!なんてことはあるのでしょうか。
ありません。イメージどおりです(笑)。試合に関して言えば、僕は終わったあとより試合をしている中でいかに変化をつけられるかが大事だと思っているので、喝じゃないですけど、試合中に気がついたことを言うことはあります。けど、試合後のことはコーチに任せていますね。もし自分が何かを言うとしたら、負けた試合より勝った試合のあとの方が多いかもしれません。チームの方向性を自分の発言で示せたらいいなと思っているので、うまくいったことの再確認というか、そこはわりと意識して口にするようにしています。やっぱり僕も一応34歳になったんで、それ相応には経験値も増えましたし、バスケの引き出しも増えたと思うんで、感じたこと、思ったことはしっかり発言しなきゃなと思うようになりました。
── そうなると、これからは岸本さんのところに相談に来る選手も増えるかもしれませんね。
どうですかね。うーん、いや、それはちょっと(笑)
【後編】今季のキングスにネガティブな要素は1つもない へ続く
文 松原貴実
写真 B.LEAGUE