昨シーズン先発出場機会のなかった若い2人を大抜擢
Bリーグの新シーズンが開幕し、B1東地区は8チーム中5チームが2連敗を喫した。2連勝したのは群馬クレインサンダーズと千葉ジェッツのみ。秋田ノーザンハピネッツは、強豪ひしめく中地区の川崎ブレイブサンダースと対戦し、73-81で開幕戦を落とした。
「試合が終わったあと、ムッチャ腹が立って…」と前田顕蔵ヘッドコーチは自戒の念に駆られる。腹立たしさの矛先は「選手に対してではなく、自分自身が徹底させられなかったから。誰でもできるようなバスケをさせてしまっている部分が、すごく悔しかった。川崎のベンチメンバーが活躍しているのも悔しかった」。怒りや悔しさは、勝負事にとっては最高のスパイスにもなる。
開幕戦の出場時間は8分51秒だった3年目の小栗瑛哉と、3分にも満たなかった2年目の元田大陽を2戦目はスタートから送り出す(※2人とも1年目は特別指定)。昨シーズン、1度も先発で起用されなかった2人であり、ルーキーの元田にとってははじめての大抜擢だった。前田ヘッドコーチは過去にも、試合までのパフォーマンスを考慮しながら先発をその都度入れ替えてきた。敗戦から24時間もない短期間に、若い2人を先発で起用する決め手となったのも、ヘッドコーチ自身に向けた憤りだった。
「昨日の試合展開の中で、僕が彼らを出すことができなかった不甲斐なさと、選手たちを信じてあげたかったという部分で2人に先発を任せた。どうなるかなと思ったが、試合がはじまる前に『ベンチにはたくさんの経験ある選手たちがいるから、思いきってやって欲しい』と伝え、しっかりがんばってくれた」
小栗と元田が先発を伝えられたのは、試合直前のこと。「アップしてロッカールームに戻ったら、名前が書かれていた状況でした」と小栗は驚く。一方で、「いつでも来いよ、と常に準備しており、その結果が第1クォーターにつながったと思います」という心構えが功を奏す。先発が決まり、ふたたびコートに入る際、「脚を使って(ディフェンスで)見せることによって、ベンチから出てくるメンバーにも良い刺激を与えられたらいいのかな」と小栗は、元田と確認し合う。ディフェンスを意識して試合に入ったことで川崎の自由を奪い、秋田に勢いをもたらせた。
小栗は大阪産業大学や3×3を通してシュート力を発揮してきたが、「それに加えて、ゲームを読む力をもっともっとつけていかなければいけないと言われています」とチームの勝利に貢献するため、今はオフェンスの強みを少し抑えている。