「探究する道のとおく」(中編)より続く
人生は死ぬまでの暇つぶし。
世に溢れるエンタメの数々がそれを証明しているかのよう。
飽和状態にあるコンテンツの海からバスケットボールが選び取られるには、ハイレベルなプレーの提供だけでは不十分だ。
近年では実に多くの選手がコート外でも活動の場を広げ、市場の拡大と発展に大きく貢献している。
牧隼利もその1人だ。
試しに『牧隼利』でググってみたらば、なんやらいろいろ出てくる。
X、Instagram、note、Voicy …
最近はどうやらオフィシャルファンクラブに集約された模様だが、それ以前の定期的な更新には彼の勤勉な人柄が窺える。
ガラケーユーザーからするとこれだけのアカウントを管理する労力を想像するだけでも気が遠くなる思いだ。
デジタルネイティブ、恐るべし。
「コロナ禍で暇だったとか、そういうのもあると思うんですけど、でも琉球ゴールデンキングスっていうチーム、沖縄という土地がすごく特殊だったのかなって今はすごく思っています。それこそバスケットだけやっていればいいような感じではないというか。なんていうんですかね……プロ選手としてどうキャリアを積んでいくかみたいな。それはプライベートなところでもそうだと思いますし、コート上でもオフコートでも、みたいなところをすごく琉球に行って感じました。」
スポーツには人のココロをたぎらせる力が備わっている。
コートの中のストーリーを創り上げる選手たちの人間性は、ときにその力を倍増させ、そして半減させもする。
「プロスポーツ選手としてどうあるべきか、みたいなものも感じました。高校でもちゃんと提出物を出さないと練習に参加できないとか、学生の本業を疎かにしてバスケットだけやってればいいってものじゃないよね、っていう両親の教えが昔から、高校でも大学でもあったので。学校がなくなったらバスケだけになって余計に暇になって、そういうことを考えなきゃなっていうふうには思いました。」
閑暇は哲学の母。
忙殺される毎日ではなにかにじっくりと思いを巡らすことは難しい。
働いていると本が読めなくなる現代社会で、キャリアのスタート地点に過剰ともいえるほどの余暇を手にしたことが、彼に行動を決断させた。
「今はバスケ選手でなくてもみんなが発信できる時代だから、その利点を活かしてやろう、みたいな気持ちもあります。個人的には、このプロスポーツ選手という、終わりがいつかわからない、短い可能性が高いっていうのはわかっているし、絶対一生はバスケを続けられないっていうのがわかった瞬間に、できることってあるんじゃないかなっていう危機感というか、バスケが終わってどうするのかな、みたいな。考えてしまったんですよね。」