劇的な展開でB1昇格を勝ち取り、意気揚々とB2ファイナルの舞台に臨んだ越谷アルファーズも、リーグ優勝にはあと一歩届かなかった。滋賀レイクスとの間で争われた5月18日の第1戦は、オーバータイムの末に黒星。翌19日の第2戦は第4クォーター残り48秒時点の7点ビハインドを残り10秒で2点まで詰め、さらにはLJ・ピークのスティールでチャンスが生まれたが、逆転を狙ったピークの3ポイントは無情にもリングに弾かれた。
とはいえ、越谷がプレーオフに入ってギアを上げ、目標に向かって力強く戦い、その1つを達成した事実に変わりはない。大挙滋賀に駆けつけたアルファメイトと呼ばれるファン・ブースターの後押しも心強く、安齋竜三ヘッドコーチも「素晴らしいチームを相手に、闘う姿勢を出した選手たちを誇りに思います。今日もそうですが、今シーズンを通じてアルファーズに関わってもらったスポンサーさん、ファンの皆さん、行政の皆さんに感謝しかない。それがあったからB1昇格を勝ち取れたと思います」と、クラブとしての一体感に胸を張った。
この第2戦を振り返ると、越谷には不利な状況もあった。第2クォーター残り5分に発生した、ジャスティン・ハーパーの負傷だ。レギュラーシーズン1試合平均18.0得点でリーグのランキング5位に入ったチーム一の得点源は、この試合も既に11得点を稼いでいた。ハーパーが後半コートに立てなかったことは、越谷にとって致命的なダメージになりかねなかった。
しかし、越谷にはそれをカバーできる選手がいた。井上宗一郎はこの日、3ポイント7本中4本成功の12得点。第3クォーター残り6分25秒にはファウルを誘いながらねじ込んでみせた。ハーパーの負傷を受けてスタートで出場した後半の20分間で、井上がベンチに下がったのは3分30秒間だけ。勝負が決まる最後の場面も、井上はコートに立っていた。
サンロッカーズ渋谷から出場時間を求めて越谷に移籍してきた当初の井上は、安齋HCに言わせると「基礎が全くない。3ポイントは入るけど、それ以外は何やるの? という感じ」だった。シーズン中も、安齋HCは井上のパフォーマンスに満足していたわけではなかったが、それは期待しているからこその厳しい目でもあった。2月3日の岩手ビッグブルズ戦の時点で、安齋HCは井上をこのように評している。
「前半戦よりは良くなってきた感じですかね。あの若さではまだまだやりきれてないと思いますが、今はプレータイムもあるわけですから、その責任を果たすために時間がある限り努力してほしいと思います。やり続けてはいますが、もっと自分を追い込んで、突き抜けていかないと脱皮できない。それはトップの選手を見ててもそう思うので、今やらないと。若いうちが勝負だと思うんでね。
日本代表でもただ3ポイントを打っていればいいというわけではないし、ディフェンスやリバウンド、スペーシングを上げていかないと、代表にも呼ばれなくなる。責任を持って外国籍選手とマッチアップできるくらいに成長していってほしいです。宗一郎の成長がアルファーズのカギを握ってるのは間違いないし、うちにはプレータイムのない選手やベンチ外の選手もいるので、責任を持ってやり遂げてほしいですね」
当の井上自身も、その時点で自分の課題を理解し、役割も認識していた。出場機会が増えたことで、自身のプレーがチームにどれほどの影響を与えるかという意識も強くなっていった。