ヒース自身、自身が戦列を離れていた期間については「大変でしたね」と振り返る。インサイドを担う外国籍選手にかかる比重が大きいことを当然ながら理解しており、川崎における自身の立ち位置もよくわかっているからこその率直な発言だ。
「外国籍選手のポジションは数が限られていて、そこが欠けてしまうのはチームにとってディスアドバンテージになる。僕自身にとっても厳しい状況でしたが、チームも厳しかったと思います。チームメートもコーチ陣も僕に頼る部分は大きいと思うので、彼らのプランを徹底するためにも僕は必要なピースなんだということを改めて強く思いました」
だからといって、戦列復帰に際して決意を強くしたわけではなく、気負うこともなかったという。喜怒哀楽を表に出さず、黙々と自身の役割をこなす職人のようなイメージもあるヒースは、表情を崩すことなく「今日もいつも通りです。スクリメージでもCSでも、何かがかかっている試合だとしても、全て同じルーティーンと平常心で臨むことが大事。どんな試合でもしっかり集中しないといけないので、復帰してからもずっとそれをやろうとし続けています」と言いきる。
川崎はこのSR渋谷との第1戦を終えたところで、直近の7試合で6勝とCSに向けてギアは上がっている。レギュラーシーズンの最終盤になってもポストシーズンの切符を手にしていないという現実は、Bリーグ以降の川崎にとっては未知のシチュエーションだが、常に地区優勝を争う川崎の一員として戦ってきた経験から、ヒースは「自分が復帰したことでチームが上向いたとは思っていない。僕自身、どんな状況であってもベストを尽くすことは徹底していますし、川崎に5年いる中で多くの試合を勝ってきた」とチームの地力に確信を持っている。
翌日の第2戦も激戦となり、同点の残り3.5秒に勝ち越しを許してSR渋谷に軍配。川崎は順位を抜き返されてしまったが、SR渋谷とは2勝2敗ながら、得失点差で大きくリードしたためタイブレークのアドバンテージは確保した。さらに、同日に敗れた三河とは2ゲーム差のままで、その三河にも3勝1敗と勝ち越しており、中地区2位フィニッシュの可能性もまだ残っている。もちろん、三河が最終節で1つでも勝てばその可能性はなくなり、最終節にSR渋谷より1つ以上多く勝たなければCS進出も叶わなくなってしまう。ヒースもSR渋谷との第1戦の後に「自分たちのベストを尽くして、ゲームプランを徹底してやっていくこと。他のチームがどうなるか、どこが勝ってどこが負けるかというのはコントロールできないので、自分たちにできることに集中して、勝ちにいくことしかできない」と語っているが、とにもかくにも可能性は残された。川崎は本来の川崎らしい戦いができるか、そして「川崎は僕の中で特別な場所。5年もここにいることができて、本当に光栄です」と感謝してやまないヒースはどのように貢献するか。最終節の相手は、昨シーズンのCSで苦杯を喫した横浜ビー・コルセアーズ。その2試合に全てがかかる。
文 吉川哲彦
写真 B.LEAGUE