連敗で信じられなくなったチームディフェンス
この両チームは異なるグラデーションで、シーズン終盤を迎えている。大型補強により期待値も高かったSR渋谷だが、開幕当初にケガ人が出たことで戦力が整わず、大きく負けが先行していた。昨年末、群馬クレインサンダーズに勝ち、13勝13敗の振り出しに戻すと、本来の強さが戻る。ホーム11連勝で好転し、チャンピオンシップ争いに絡むまでの復活を遂げた。
対する川崎はスタートダッシュに成功し、三遠とともに首位争いを演じていた。しかし、年が明けた頃からファジーカスやヒースなどケガ人が出たことで、勝てない時期が続く。戦力が戻っても、前節までは4連敗を喫し、「いずれも90点台の失点が続き、選手同士の会話も『ディフェンスはどうする?』『このままで大丈夫か?』という声が多かった」と佐藤ヘッドコーチが近況を明かす。チームとして築きあげてきたはずのディフェンスが、どこか信じられなくなっていた。
自分自身を見つめ直すことも大事だが、徹底されているSR渋谷の対策に専念し、闘争心をかき立てる。短時間ながらも前日練習は、強度もモチベーションも高く過ごすことができた。「流動的にみんなで動いて、相手のプレーを読みながら今日のようなディフェンスが継続できれば、必ず良い結果は続いていく」と佐藤ヘッドコーチは手応えをつかみ、選手たちにとっても自信を取り戻す大きな1勝となった。
2シーズン前までB2でプレーしていた野﨑にとって、CSは雲の上のような存在だったときもある。だが、川崎のユニフォームを着ているからには、ファーストシーズンから進み続けてきた舞台へ引き上げなければならない。はじめてのCSへ向け、「今は厳しい状況にいますが、こういう逆境をどれだけ乗り越えられるかが、CSに出られたときに絶対にプラスになると思います。まだまだ可能性はあり、誰もあきらめていない。常にディフェンスの強度を高くキープできるかがカギだと思っているので、そこは楽しみつつ、勝ちにこだわってがんばっていきたいです」と未知の扉をこじ開ける。そのためにも今日のような試合を続けていくだけだ。
「スモールマンもビッグマンもみんなが機能し、良いディフェンスができました。そのまま良い速攻につなげて80点を獲り、50点台に抑えられたのはすごくプラスになりました。やっと川崎らしいバスケができ、これを目指しています。今後も同じような試合を継続して、驕ることなく気を引き締めていきたいです」
次節はSR渋谷が2位の三河とのホームゲームであり、翌週には川崎がホームに三河を迎え、上位に挑む。ここで抜け出すチームはどこなのか、はたまたFE名古屋が漁夫の利のごとく抜いていくのか。これまでワイルドカード争いにはあまり関わることがなかった中地区だが、東と西とともにうねるような春の嵐を巻き起こしている。
文・写真 泉誠一