このコメントにもあるように、板橋は白鷗大の出身。今年度のインカレも制した強豪だが、板橋は「僕は後輩を見習う立場です(笑)」と控えめに語る。ベンチスタートながら奈良で存在感を表し始めた矢先に、意を決して湘南に新天地を求めた板橋に、いわゆるエリート意識のようなものはない。
「すごく有名な高校や大学でやってきたわけじゃないですし、どちらかというと下から這い上がっていくほうが好きなタイプなので、B3に来るのも抵抗はなかったです。堀田さんとは奈良でもちょっと一緒にやってますし、自分のやりたいことをわかってくれるんじゃないかと思って移籍してきたので、それがチームとして良い結果になればいいなと思ってます。プレーオフに出て結果を出すことが恩返しだと思います」
残り試合が少なくなってきたとはいえ、プレーオフ進出ラインの8位は射程圏内。開幕当初の厳しい状況から盛り返した今の状況は、B2の舞台を経験してきた板橋によるチームへの働きかけも奏功しているようだ。
「7月にチームに合流したときから、プレーオフに出るというのがまずチームとしての目標だったので、開幕6連敗したときはメンタル的にだいぶきつかったですが、周りの選手が成長して、ブースターさんも成長してくれているのを見ると、どうしても頑張らないといけないと思いました。
僕は自分がどうこうというよりも、チームが勝つことが一番。昨シーズンは奈良で、B1でアシスト王を取った宇都直輝さんと一緒にやって、バスケットもそうですしメンタル的なことも学べることがたくさんあったので、今はチームに対して僕が言えることを言うことは心がけてやっていて、周りの選手もどんどん言葉を発するようになってきたので、それが今の結果に大きくつながってると思います」
25歳とまだ若い板橋は伸びしろも十分。B3でのプレーを選択したのも、自身の成長を期してのことだ。よりレベルの高い舞台にいずれは立ちたいという想いがあるからこそ、板橋のプレーには磨きがかかり、今シーズンは実際にB1チームとの対戦も経験し、良い感触もつかんでいる。
「まずはB2に上がって、あわよくばB1で、今までテレビで見てきたような選手といつか対戦したいなというのはあります。今シーズン最初の試合が天皇杯で、アルバルク東京という日本のトップレベルのチームと戦って、チームとしては差があるとも思ったんですが、自分自身はフィジカルやスピードの差はそこまで感じなかったので、そこに1回チャレンジしたいです。あとは、僕みたいに小さい選手に希望とか夢を与えられる選手になれればと思ってます」
翌日の第2戦はオーバータイムの末に黒星。プレーオフ圏内とのゲーム差は1つ縮まったが、残る12試合でまだ成長が必要だ。もちろん、その中で板橋が担う役割はさらに大きくなる。常に高みを目指すその向上心で、チーム全体をも這い上がらせることができるか。
文・写真 吉川哲彦