「今回横浜武道館に戻ってくることができて、横浜と戦えることはすごく嬉しかったですし、何より石田さんは私が日本に来るチャンスをくださった方。今は違うチームになり、敵同士ということになりましたが、横浜のおかげで日本でHCになることもできたので、本当に感謝しています」
昨シーズンはバックアップする立場だったが、今シーズンは自身が陣頭指揮を執ってチーム作りをしている。それも、新規参入クラブの初代HCという重責だ。しかし、30歳の年にHCとしてのキャリアをスタートさせているベリーHCは、既に新規クラブを率いた経験があるとのこと。その経験が生かされているとともに、まだ来日2年目という中でも良い環境を得られている実感もある。
「これまでも立ち上げのチームに携わったことがあるんですが、日本では当然初めてです。ただ、徳島は場所も最高だし、人も素晴らしい。良いファン・ブースターに恵まれて、チームがここまでこの順位でいられることは、やるべきこととして自分が計画していたことがしっかりできているのではないかという手応えを感じています」
当然ながら、チームにはシーズンを通しての成長が求められる。52試合あるレギュラーシーズンも、横浜EX戦を終えた時点で残り12試合と少なくなってきた。プレーオフ圏内をキープし、ホーム開催も見据える中で、ここからは内容にかかわらず一つでも多く勝利することが最優先されそうなものだが、チームビルディングを任されて1年目という現状の重要性を認識しているベリーHCはブレない。今大切なのは、最も価値のある試合に向けて準備を進めることだ。
「もうシーズン終盤に差しかかってはいますが、それでも結果にこだわるのではなく、これまで通り過程を重視し続けて、1試合1試合、1つ1つのポゼッションを大事にして臨む必要があります。オフェンスではボールを回して良いシュートを選ぶこと、ディフェンスではいつでも選手たちが連動して守ること。それがしっかりできれば良い結果につながると思っていますし、他のチームやリーグ全体を驚かせるような結果を出すこともできると信じています」
先に書いた通り、ベリーHCは環境に恵まれていることに感謝したが、徳島ガンバロウズというクラブにとっても、初代指揮官にベリーHCを迎えたことは幸甚。そして、これまでプロバスケットボールに触れる機会が極めて少なかった徳島という土地にとっても、新たにクラブが立ち上がり、好成績を収めていることはこの上ない出来事だ。徳島がプロ元年にどのようなインパクトを残すか、今後どのように発展していくか、ベリーHCにかかる期待は限りなく大きい。
文・写真 吉川哲彦