あこがれはあこがれられへ(前編)より続く
「敵のときは本当に厄介な選手でした。彼がボールを持ったら必ず得点、みたいな印象が強かったので。それが味方になって一緒にプレーしてると、相手かわいそうだな、とか、マッチアップしてるディフェンスかわいそうだな、とか、どうやって止めるんだよ、とか。試合中も練習中も心の中で思ってます。」
ダバンテ・ガードナーについて語ってもらった久保田義章の言葉だ。
自分たちをボコボコにしたラスボスみたいなバケモノが、いつの間にか仲間になって相手をボコボコにしていた。
これも選手が移籍で感じる面白みの一つだろう。
ガードナーだけでなく、ザック・オーガスト、ジェイク・レイマンと、能力の高い外国籍選手が揃った今年のシーホース三河はポイントガードに多くの選択肢をもたらしてくれる一方、優秀なオプションが多い故に頭を悩ます場面も少なくない。
移籍後のパフォーマンスについて「まだ100%出せているとは個人的に思っていない」と久保田が言うように、すべての課題が解決されているわけではない。
「自分でも得点が取れるということは京都(ハンナリーズ)時代からわかっているので、そういったところを出せればいいかなと思っています。」
自らの得点とゲームのコントロール。
このバランスはポイントガードが最も苦心する作業だ。
現在、三河でシニアプロデューサーを務めるMr.バスケットボール、佐古賢一氏は若き日の筆者に「三回得点できなかったら自分が攻める」といった感性を伝えてくれたし、佐古氏と近しい世代のレジェンドポイントガード、節政貴弘氏は「10点5アシスト」という目安を与えてくれた。
変数に溢れたバスケットボールのゲームにおいて、一般的な法則や正解など存在しないのかもしれないが、それでも選手はそれぞれの価値観においてプレーを重ねていく。
得点、アシスト、両方の能力に長けた久保田がいったいどのようなバスケットボール選手を目指しているのか、気になって聞いてみたところ、意外な答えが返ってきた。
「自分がプロのバスケ選手になりたいと思ったのが小さい頃で、それはプロの試合を観に行ったときに、選手を見て自分もこういう選手になりたいなって思って目指しはじめたんです。なのでプロに入ってどんな選手になりたいですかって、はじめに聞かれたときに、僕は僕のプレーを見て子供たちがプロになりたいって、僕を目指したいって、言ってくれるような選手になりたいですって最初っから言っていたのは、今でも全然変わってないです。」
そしてそのとき、きっかけとなった選手というのが、
「ライジング福岡だったときの川面剛さん。僕の大学の監督です。」