B3参入3シーズン目となる山口パッツファイブは、2024年の最初の試合をホームで迎えた上、オーバータイムの熱戦の末にアースフレンズ東京Zを下し、新年を幸先良くスタートすることができた。参入初年度が12勝40敗、昨シーズンが13勝39敗と大きく負け越したチームは、この東京Z戦の勝利が早くも11勝目。今シーズンの2度のオーバータイムはいずれも制しており、接戦で白星を手繰り寄せるだけの地力をつけてきていることは確かだ。
オーバータイムの5分間では、吉川治耀の活躍が光った。今シーズンはベンチスタートの試合が多い吉川だが、この日はスターターで出場。代わってベンチスタートとなった重冨友希のパフォーマンスが良かったことで、後半はベンチを温める時間が長く、指揮を執る鮫島和人選手兼ヘッドコーチには「このままいくようだったら自分は出なくていいですよね」と話していたそうだが、重冨が第4クォーター残り18秒と15秒に立て続けにファウルを犯してファウルアウトしてしまい、ここで吉川がコートに立った。さすがに体は冷えてしまっていたが、「もう『やってやろう』という気持ちしかなかった」と吉川は振り返る。
結果、吉川は第4クォーターまでに1本も決めていなかったフィールドゴールを2本決め、得意のディフェンスでは東京Zのオフェンスの起点であるキャメロン・パーカーに密着し、オフェンスファウルやターンオーバーを誘った。
鮫島選手兼HCによれば、重冨が4つ目のファウルを犯した際に、アシスタントコーチから重冨を一旦ベンチに下げる提案があったという。しかし、鮫島選手兼HCは「誰が出ても同じクォリティーでプレーできるというチームコンセプトがブレてしまう」と考え、あえて重冨をコートに残した。そこには「友希がファウルアウトしても、治耀がいるから大丈夫」という吉川への信頼があり、吉川はその期待に見事に応えてみせた。
ベンチに座っている間もしっかり戦況を見ていた吉川は、自身に課された役割も心得ていた。守る相手がキーマンだったからこそ、ディフェンダーである自らの仕事が勝敗を分けるということもわかっていた。
「試合を通して1番の選手(パーカー)にやられてたので、そこは絶対に止めてやろうと思ってたし、延長戦も1番がずっとボールを触ってて、ここを止めれば勝てるなと思いました。それでオフェンスファウルをもらったりスティールできたりしたのが良かったです。今日は接戦の中で上手くコントロールしないといけない試合、ポイントガードがカギを握る試合だったと思います」
実際のところ、パーカーが攻めてくることはわかっていても、体が冷えていたということもあって「普段ならもっと前に入るディフェンスができたんですが、ちょっと触ったらすぐファウルを吹かれる感じがしたし、左だというのはわかってたんですが自分も体が動かないんで難しかった」という。それでいて、「本当はもっとスティールしたかったですね。頭の中はめっちゃスティールでした」と明かしたように、パーカーのドリブルに幾度となく手を伸ばし、相手を落ち着かせなかったのはディフェンダーの本領発揮。チームから求められている仕事を遂行した点で、貢献度は高い。