冒頭に書いたように、バスケットと接点を持ったこともFukaの人生に潤いを与えた。現状維持が大嫌いで、同じルーティーンを続けるのが苦手というFukaは、心が動く刺激的な現場にいたいという想いが強く、バスケットボールの試合は踊ることへの夢も同時に満たす最高の舞台。10年目を迎えるこの舞台は、たどり着くべくしてたどり着いた場所なのかもしれない。
「バスケットは基本的に室内競技だから照明もあるし、スポーツ×エンターテイメントとしてすごく楽しい。Bリーグができて代表がどんどん活躍して……この時代に生きてるのは幸せだなと思います。細かいルールの部分や選手の上手下手というのは詳しくわからない部分もあるし、それこそ最初の頃は『シュート入る人すごーい』くらいの感じだったんですけど(笑)、スポーツの現場にいることは楽しくて、応援したいって集まってきてくれる方たちとの良い出会いが増えるのも楽しいなと感じるところです。野球やアメフトなど、他のスポーツにも携わってきた中で、バスケットには一番長くいる。自分に合ってるのかなって思いますね」
体育の授業でもバスケットはできるだけ遠ざけたかったというFukaだが、例えば「立ち位置を間違えるのは、選手がフリースローのラインを間違えるのと一緒」といった具合に、今では選手に置き換えて指導することもあるそうだ。
傍から見ている限りでは、心身ともにタフでなければ、「本当に日々大変(笑)」と認める多忙な毎日を送ることはできないと思ってしまう。その実、「こんな大変な思いをして何のために頑張ってるんだろう」と思うことも間々あり、悩みやすく落ち込みやすい性分と自覚しているFukaは、そんな自身と向き合いながら、日々の充実感やその先にある達成感をエネルギーにしている。
「パフォーマンスを届けた先のお客さんが喜んでくださったり、新しい仕事ができたときに『頑張ってね』と連絡をくれる人がいたり、本当に幸せだなって思います。ここ数年、一番言われるのが『体調に気をつけてね』ということなんですけど、体調を1回も崩してないのはたぶん楽しいからだし、好きだからなんだろうなって。私は10年くらい前にパニック障害を発症したことがあって、それからはその症状と付き合いながら生きてるんですよね。だからもともとメンタルは強くないし、こういう仕事をしてると評価されることも多いので浮き沈みもあるんですけど、『もうダメかも』と思ってしまって表に立つことができなくなるのは本当にもったいないから、みんなが良いマインドとモチベーションで活動に取り組めるように、自分の経験から伝えられることは伝えていきたいです」
バスケット界が右肩上がりの中、Fukaは「チアはまだそれについていってる度合いが少ない」と感じている。同じ成長曲線を描いていけるように、というのが今のFukaのモチベーションの1つ。専属プロ契約のチアリーダーを抱えるアルファヴィーナスでのディレクター業も、Fukaにとってだけでなく、日本のバスケットチアにとって意義のある挑戦となる。
文・写真 吉川哲彦
写真提供 株式会社GRIT