チームメートの良さを引き出すという点でいえば、帰化枠のビッグマンである小寺の存在は、同時にコートに立つ外国籍選手にとってとりわけ重要となる。今シーズンの越谷の場合は、LJ・ピークというウィングのスコアラーがより持ち味を発揮できるかどうかという点が、小寺の大きな仕事の1つということになるだろう。「まだ若いんですが精神年齢が高く、自分より年上なんじゃないかと思うくらい落ち着いている」と、ピークのことは相当高く評価しているようだ。
「このチームに来た理由の1つが、LJと一緒にプレーできるということ。越谷に来る前にいろんなチームからオファーはいただいていたんですが、そのときは家族との時間を優先していて、プレーを続けるかどうかを悩んでいました。ただ、夏が過ぎてまたプレーしたいと思うようになったときに、越谷でLJと一緒にプレーすることが自分にとって一番プラスになるんじゃないかと思ったので、越谷に来たいという気持ちがありました。こうして越谷に来ることができて、LJとお互いに尊敬し合い、いろいろ教え合いながら良い関係を作れていると思いますし、バッツという見た目は同じだけどプレースタイルが全然違う選手もいて、このチームにどういう化学反応を与えられるかという楽しみもあります」
言うまでもなく、チームを勝たせることは小寺にとって最優先事項。「ここ数年は素晴らしいロスターでも結果につながらなかったので、自分はこのチームに貢献して歴史を変えたい。ポテンシャルは高いと思うし、来年4月にプレーオフが始まったときにチームがどんな形に出来上がっているか、本当に楽しみなシーズンです」と、目標は明確だ。
小寺がB2所属の越谷でプレーする意味がもう1つあるとすれば、兄弟対決だ。NBA経験もある弟・ジョーダンが当時B1の滋賀レイクスと契約して初来日を果たした2020-21シーズン、小寺はB2でプレーしていた。翌シーズン、小寺が琉球に移籍すると、入れ替わるようにジョーダンはB2熊本に移籍。そして、小寺がB1復帰初年度の仙台に在籍した昨シーズンは、ジョーダンがシーズン半ばに再び滋賀の一員となり、ようやく同じカテゴリーでのプレーが叶ったが、対戦を前にジョーダンは期限付移籍で滋賀を離れていた。
今シーズンも、越谷は小寺が加わる前にジョーダンを擁する青森ワッツ戦を2試合消化したばかり。ほんの少しタイミングが合わず、兄弟はすれ違っていたのだが、幸いにも同じ東地区の越谷と青森の対戦はまだ4試合残っている。小寺は「兄弟対決にはそこまでフォーカスはしていない」と言いつつも「今回は上手くいけば対戦がある。兄弟揃ってプロとして日本でプレーしているのは本当に恵まれたことだし、ジョーダンも日本が大好きで、こんな2人が対決するというのはすごく楽しみです」と、コート上での再会はやはり待ち遠しい様子だった。B1昇格を狙う越谷でのプレー、そして弟との直接対決と、小寺は一際高いモチベーションで39歳のシーズンを過ごす。
文 吉川哲彦
写真 B.LEAGUE