河村にドライブのチャンスがあると見るや、ディフェンスをシールして河村がアタックするコースを空ける場面も幾度となく見られた。河村の得点力が生きているのはインサイドを制することのできるビッグマンの献身性によるところも大きく、チャールズ・ジャクソンが京都ハンナリーズに去った今シーズンは、スコットがその役目を引き受けている。
「勇輝は非常にタレントのある選手で、彼をいかに簡単にプレーさせることができるかが自分の大きな仕事の一つだと思っています。スクリーンをかけることもそうですし、自分が培ってきた経験を教えたり、それ以外の部分でも彼の良さを何でも引き出せるように仕事をしているつもりです」
初めてBリーグでプレーした2017-18シーズンは、島根スサノオマジックで1試合平均18.1得点、10.8リバウンドという数字を残している。チームの中軸を担うだけの実力を持ちながら、状況に応じて脇役に徹することもできるスコットは、外国籍選手としては稀有なレベルのチームプレーヤーだ。
「今はまだ、毎日の練習や試合でチームが良くなるように自分の仕事を探している段階ではありますが、一番大事にしているのはチームの勝利。そのためにやらなきゃいけないことを全力でやるということを心がけています。ディフェンスやリバウンド、ペイントを守ることは一生懸命やっていますし、ここからもっとケミストリーが良くなるように、自分の良さも出していきながら連係を深めていきたい」
今シーズン横浜BCでプレーすることについて、「昨シーズンの悔しい思いを今シーズンにつなげて上達したいというのが選手みんなにあって、毎日向上心を持って取り組んでいるということが、自分にとっては大きい。お互いに教え合いながら成長できるのがこのチームの魅力」とスコットは語る。その横浜BCにおけるスコットの仕事は、ただ献身的にプレーすることだけではない。チームメートと成長を競い合う中でも、宇都宮ブレックス時代にリーグ制覇を経験したスコットにしかできないこともある。
「チーム自体は、勝つ文化は昨シーズンから既にあったと思います。ただ、チャンピオンシップのようなビッグゲームで勝ち進んでいく経験、強いチームを相手にしても勝利を重ねるような経験は自分のほうが持っていると思うので、若い選手が多いこのチームに自分の経験を還元していきたいという気持ちは強いです」
昨シーズンの横浜BCは中地区優勝争いを演じ、CSには第6シードでの進出だったが、地区優勝を争った相手である川崎ブレイブサンダースを撃破。セミファイナルも、後に優勝することになる琉球ゴールデンキングスに食らいついた。殻を破ったシーズンであったと同時に、頂点に達するにはまだ足りないものがあるということを知ったシーズンでもあったわけだが、その足りないものを埋めるという点で、スコットは適した人材だ。2021-22シーズンの宇都宮はシーズンを通して徐々に完成度を高め、CSで一気にギアを上げて第7シードからの優勝だった。第8節を終えた時点でまだ黒星が先行している横浜BCも、スコットの貢献に支えられてここから快進撃が始まる、そんな期待を抱かせる。
文 吉川哲彦
写真 B.LEAGUE