── では、そのためにもGMとして心がけていることがあれば教えてください。
伊藤 うーん、そうですね。やっぱりこの仕事をやっているとつらいとかきついとか感じることがほんとにいっぱいあるので、その中でバスケットを嫌いにならないことでしょうか。
── バスケットを嫌いにならない?
伊藤 はい。この仕事をやるようになってからいろんな人と会って、いろんなやりとりをして、いろんなことも言われ、ときには納得できないとか、まあいろんなことがあるんですけど、それは別にバスケットのせいじゃないんですね。あくまで人間対人間の問題であってバスケットは関係ない。人間が勝手にごちゃごちゃやっているだけで、バスケットはバスケット。いつだってシンプルなんですよ。だから何かいやなことがあってもバスケットと結びつけて考えるのは違うと思うんです。何があってもバスケットは変わらないのだから、僕はそのバスケットをずっと大好きでいようと。なんかうまく言えませんが、伝わりますかね?
── 大丈夫です。十分伝わってきました。
伊藤 あと、もう一つ心がけているのは、自分を否定しないことでしょうか。僕は結構ポジティブな性格で、昔からいろんなことをポジティブに解決してきたつもりなんですけど、GMの仕事は特にそれが大事になるんですね。自分で俺はだめだと思ったら、そこで終了というか、先に進めなくなるんです。だから反省はしても否定はしない。そうすることで今回上手くいかなかったことも次につなげることができると思うんですよ。すぐに上手くいかなくてもやっていることが間違っていないと思えれば自信もついてくるはずです。なので、自分を否定しない。それは心がけるようにしてますね。
── 最後にお聞きしたいのはGMという仕事のやりがいについてです。伊藤さんがやりがいを感じるのはどんなときですか。
伊藤 前にも言いましたが、GMはコーチと話をして、こういうチームを作りたい、こういう方向に進みたい、こういうバスケがしたいと明確なビジョンを伝えるのが仕事です。その最終目標が優勝になるわけですが、それ以前にも細かい目標をクリアしたとき、目指すものに一歩でも二歩でも近づいているなと感じられたときに充実感を覚えますね。また、選手にはチームのために尽力してくれるたくさんの裏方さんや見えないところで支えてくれる人たちの話をよくするんですが、彼らがちゃんと理解してくれているなあと感じられたときもすごくうれしいです。
── そして、時にはうわーっと全身に鳥肌が立つ(笑)
伊藤 そう、病みつきになるあの感覚ですね(笑)。GMとして僕が目指しているのは単に勝てばいいというチームではないので、アルバルクがそういうチームになりつつあるなと思えれば、それが一番のやりがいになります。これからドラフト制度が実施されるのか、それに伴うサラリーキャップはどうなるのか、などなどGMの仕事もさらに大変になりそうですか、めげることなく自分なりに頑張っていくつもりです。
アルバルク東京 伊藤大司GM
GMはフロントと選手を繋ぐブリッジだと思っています。
前編 一時はバスケットと無縁の仕事に就くことも考えた
中編 頭の中には四六時中バスケットがある
後編 選手たちとポジティブなエネルギーをシェアしていきたい
文 松原貴実
写真提供 アルバルク東京、B.LEAGUE