河村勇輝の脅威を消すためにも「まずボールを持たせないこと」
試合直前、横浜ビー・コルセアーズのジョシュ・スコットがコンディション調整のために欠場することが発表された。インサイドの起点を欠く厳しい戦いを強いられた横浜ビー・コルセアーズは、60-83でサンロッカーズ渋谷に敗れ、ホーム2連敗。スコット不在のなかで「どう戦うかを試される試合だった」という青木勇人ヘッドコーチは、「シュートの当たりが来ないことで少しタフショットになり、ペイントタッチが少なくなってしまった。そのせいもあり、得点が伸びない時間帯が多かった」とこの敗戦を振り返る。対するSR渋谷のルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチはディフェンスを勝因に挙げ、「一人ひとりがチームのために責任を持ってプレーしてくれた」と弾みのつく1勝を手にした。
横浜BCの河村勇輝は今シーズン、エースとしての自覚を持って戦い、平均25.3点は得点ランキングトップに立つ(※10月25日現在)。マッチアップするベンドラメ礼生は、「1対1で止められるとは思っていない」「彼を40分間止めるのは正直難しい」「今シーズンはシュートに自信がついてビッグマンがマークに行ってもなんとも思っていない怖さがある」と昨シーズンまでとは異なる意識で対峙していた。
3ポイントシュートがあり、ペイントアタックもでき、昨シーズンのアシスト王は当然パスに長けており、守る方は的を絞るのが難しい。その中において、1.5倍のダメージがある3ポイントシュートを決めさせないように、ベンドラメは警戒していた。「どうやったら嫌なシュートを打たせられるか。どうやったら常に僕を視界の中に入れられるか」を考え、スピードで横に振られる場面もあったがリーチの長さを活かして手を伸ばし、フィジカルだけではなく心理的にもプレッシャーをかけていた。
「彼が3ポイントシュートを打つときに1回こっちを見るので、そのときに手を伸ばして視野の中に入り込むなど、そういった嫌がらせ……という言い方の聞こえは悪いですけど、そういったディフェンスを意識していました。彼は全部が見えているので、そこも含めて意識していたことでエアボールもありました。その嫌がらせが良かったのかなと思います」
パヴィチェヴィッチヘッドコーチは「あれだけ速く、フルコートを運ぶ力があり、ボールを持たれてしまえばあっという間にピンチになる。それほど危ない存在だ」と河村を認め、「まずボールを持たせないこと」に注力させる。「ドリブルの中から決める力もあるのが強み」という河村の3ポイントシュートを警戒し、ベンドラメらマークマンには「どれだけ嫌がらせることができるか」と指示を出す。シュートを打たれても、その確率を下げることが狙いであり、この日は3/12とその任務を全うさせた。それでも19点を獲った河村をベンドラメは称えつつ、「全力を彼にぶつけ、やり切った感じはあります」。ディフェンスを成功させたからこそ、続くオフェンスもリズム良くプレーでき、シーズンハイの23点につながる活躍だった。