チャンピオンチームに加わることへの不安
ケガにより長期離脱となったジャック・クーリーに代わって、アルバルク東京で優勝経験あるアレックス・カークが加わった琉球。「もともとチーム重視のプレーヤーであり、影の仕事が大好きな選手」と桶谷ヘッドコーチが言うとおり、早くも琉球スタイルに染まっていた。SR渋谷戦では追い上げられる展開の中、「ハッスルバックして相手の速攻をブロックで阻止した。あのようなシーンは今までの僕らにはなかった」と話し、チーム層がさらに厚くなった。もうひとつ、「彼のスクリーンはこのリーグでも一級品」と指揮官は絶賛。カークのスクリーンにより、スペースを確保できた状態でオフェンスが展開できるのは大きな武器であり、手応えを感じていた。その重たいスクリーンは、相手の体力を削る利点もある。
同じく先発を任された新戦力のローは、「千葉でも1番から5番ポジションまでフレキシブルに対応してきました。琉球でもポジションに関係なく、今日のようにラストショットを打つ指示があれば、チームが勝つために全力で自分のベストを尽くしていきたいです」と話し、変幻自在なプレースタイルで勝利に貢献。しかし、この試合前まで「すごくナーバスになっていた」と桶谷ヘッドコーチは明かす。
「チャンピオンとなったキングスに加わることで、自分がどれだけ活躍しないと評価されないのかという不安がすごくあった。点数を獲ることがすべてだと、本人は思っていた節もあった」
ローは4試合を終え、平均17.8点と千葉での昨シーズンと遜色ない数字を残し、新天地でも上々のスタートを切った。だが、桶谷ヘッドコーチが求めるのは、そこではない。SR渋谷との1戦目(10月14日)を終えたあと、小野寺祥太のスタッツを見せる。無得点に終わったが、プラスマイナス+/−は+17でチーム最多。「このプラスマイナスが高い選手が、このチームでは1番評価される」とローに告げた。それによって余計なプレッシャーから解放され、吹っ切れたことで逆転シュートを決める試合となった。
「この2試合でヴィックのプレーが、だいぶ変わった。自分が得点しに行くだけではなく、まわりをしっかりと活かし、ディフェンスをがんばり、スタッツには残らない影の仕事をがんばってくれた」と桶谷ヘッドコーチは喜び、琉球スタイルが浸透するきっかけをつかんだ。
昨シーズンのファイナリストは忙しい。すでに先週から東アジアスーパーリーグは開幕し、千葉はフィリピンのTNTトロンパンギガに93-75で勝利をおさめている。10月18日、琉球も韓国のソウルSKナイツをホームに迎え、国際大会がはじまる。昨シーズンの東アジアスーパーリーグの優勝チームは安養KGCであり、準優勝のソウルSKナイツとともに韓国KBL勢がファイナルまで勝ち進んだ。タフなシーズンになるが、ぜひとも日本を代表する琉球と千葉には、東アジアでも存在感を示してもらいたい。
文・写真 泉誠一