心技でチームをけん引する優れたリーダーとして知られる橋本だが、貫いてきたリーダーシップの取り方についても見直す機会を得たという。
「それまでの僕はどちらかというと『これが俺のやり方だ』みたいなのがあって『俺についてこい』的な感じだったんですよね。でも、レバンガに行って、さっきも言ったように選手はそれぞれ自分の正解を持っていることに気づいたことで、1人ひとりの意見を聞くようになったし、1人ひとりに寄り添えるようになった気がします。みんなが何を考えているのかを知り、それをまとめていくのが真のリーダーなんだと思うようになったんですね。それって自分の中ではすごく大きな変化でした。新しいリーダー像というか、まとめる力というか、それをレバンガで養えたのはめちゃくちゃありがたいことでした」
だが、人知れず苦しんだこともある。誰もが懸命に努力しているのに、それがなかなか白星につながらないとき、自分の何が足りないんだろう、どうすればいいんだろうと考え続けた。
「心が折れそうになって、泣けてくることもありました。家に帰る車の中で、運転しながら1人で泣く…みたいな。だけど、時間は進んで行くじゃないですか。自分は待ちたいと思っても時間は待ってくれない。土曜日にどんな辛いことがあっても日曜日にはまた次の試合がやって来る。だから、どんなにもがいても歩みは止めちゃいけないんです。そういうときこそ歯を食いしばってね、なんならいつもより大きな声出してね(笑)」
コートに立てば、流れを作るためのシュートやペイント内へのアタックを意識した。もともと定評があるディフェンスに加え、オフェンスでの積極性が増したことで選手としての幅が広がった手ごたえはある。
「自分がずっと目指してきた “今、コートで1番必要なことがわかる選手” に近づけているなという感触はありました。バスケットは展開が大きなスポーツですけど、その展開をどうつかむのか、あるいはつかませないか、そういうことができる選手に少しは近づけているんじゃないかと」
そんな自分を俯瞰したとき、浮かび上がってきたのは次に進む道の青写真だ。
「3度目の正直じゃないですけど、今回(A東京から)声をかけてもらったとき、これが優勝できるチームに行ける最後のチャンスかもしれないって思ったんです。レバンガでの4年間があったからこそ、次のステップに行く自分、優勝するチームに貢献できる自分を思い描けました」
A東京に入団して最初の仕事は2023-24シーズンTIPOFFイベント。質問コーナーで入団を決めた理由を聞かれた橋本の答えには迷いがなかった。まっすぐ前を向き、ただ一言「優勝するためです」。
文 松原貴実
写真提供 アルバルク東京