「長崎をB1に昇格させるというのは、2年前に自分が呼ばれたときに与えられた最低限の役割で、それを目標にして臨んできましたし、そのために長崎に来たので、達成できたことは僕自身にとっても良かったと思います。ただ、優勝もしたかったというのが本音で、それができなかったことで『またこれからも頑張れ』と言ってもらっているような、そんな気持ちもあります。この悔しさを必ず晴らせるように、B1優勝を目指していきたいです」
ともあれ、長崎は晴れて来シーズンB1という舞台に乗り込んでいく。B1でも5シーズンプレーしてきた狩俣の経験が生かされるのは、むしろこれからだと言っていい。しかしながら、発展途上にあるBリーグの成長スピードは速く、狩俣がいない2シーズンの間も着実にレベルアップしている。時折映像でB1の試合をチェックしているという狩俣は、高いレベルに戻ることには高揚感も、危機感もあるようだ。
「僕がいたときと比べて若い選手たちが出てきていて、中にはチームの主役になってる選手もいますし、マッチアップしたことのない選手もたくさんいる。すごく新鮮な感じで臨めるんじゃないかなと思います。負けないように、刺激をもらいながらやっていきたいです。
おそらくB1のレギュラーシーズンがB2のプレーオフのような感じになる。今回プレーオフを戦ったくらいのエネルギーとかスマートさとか、全てを最初から出していかないと勝てない。B1はそれくらい激しいリーグだと思うので、今からワクワクしますし、もっとタフにならないといけないと思ってます」
そう語る中で、狩俣には自信もある。それは、長崎がクラブとして良いステップを踏んできたという確信を持つからこそだ。彗星のごとく誕生し、一気に台頭してきたという誇りが狩俣を、そして長崎ヴェルカを前進させていく。
「若い選手も多いですし、B1を経験していない選手もいるので、彼らとB1から来た選手たちで力を合わせてまた一緒にチームを作っていきたい。この2シーズン、僕たちはどんなときも成長し続けてきたので、2年前にチームが立ち上がったときとは個人としてもチームとしても全然違うレベルにいる。そのことに満足するのではなく、僕たちは日本で一番のチームになっていけるだけのポテンシャルがあって、それだけのサポートも受けているということを、しっかり表現していきたいと思います」
このファイナルでは、劣勢に立たされた中でも狩俣がゲームコントロールと3ポイントでチームを引っ張り、第2戦の残り19秒、タイムアウト後のオフェンスではデザインプレーで同点3ポイントを託された。それを外してしまったことを「これからバスケットをやっていく中で、心に残っていくシーン。その悔しさを忘れずに練習したい」と振り返る狩俣は、その向上心を失うことなく、常に長崎の先頭に立ち続ける。
文 吉川哲彦
写真 B.LEAGUE