昨シーズンよりともにB3リーグに参戦し、1年でB2へ昇格した同期の桜。B2東地区チャンピオン、47勝13敗の最多勝率を誇るアルティーリ千葉。長崎ヴェルカは西地区2位(43勝17敗)。最短でのB1を目指す両チーム。しかし、日本生命B2プレーオフ 2022-23セミファイナルで相まみえ、どちらかしか目標を成就できない。
今シーズンの直接対決は3勝1敗でA千葉が圧倒している。迎えたセミファイナル第1戦の開始2分、A千葉にアクシデントが起きる。ディフェンス時にサポーターで覆われた左足を捻ってしまい、うつ伏せに倒れたレオ・ライオンズは早々に負傷退場。外国籍選手の比重が大きい日本バスケにおいて、1人でもいなくなればチームは崩壊しかねない。しかし、A千葉は誰か1人が抜けてもチームでカバーする準備はできていた。ブランドン・アシュリーと代わって入ったイバン・ラベネルが残る時間コートに立ち続ける。奮闘したA千葉だったが、初戦は104-91で長崎が勝利し、B1昇格へ王手をかけた。
後がなくなったA千葉だが、経験豊富なベテランの存在が心強い。大塚裕土や小林大祐は「第1戦に負けても、第2戦と第3戦に勝ってきたこともたくさんある」とその経験を伝え、チームを落ち着かせる。「自分はケガをしてしまった、みんなのエナジーに変えてほしい」とライオンズはチームの士気を高めた。2連勝すれば、道は拓ける。「アシュリーとラベネルは40分間コートに立ち続ける覚悟を持っていた」とA千葉のアンドレ・レマニスヘッドコーチは彼らを信頼し、続く第2戦がはじまった。
4千人を超える千葉ポートアリーナを埋めたファンが、総立ちとなって選手を後押しする。その光景を見た大塚は、「これぞホームだなと感じ、非常に背中を押されました」と言うとおり、次々と3ポイントシュートを決めて点差を広げていく。約3ヶ月ぶりとなった長崎との対戦であり、第1戦は「相手の強いプレッシャーを忘れてしまっていた」とレマニスヘッドコーチは述べ、21本ものターンオーバーが敗因だった。しかし第2戦は13本に抑え、逆に相手のターンオーバーを誘って19点を奪い、93-61で快勝。敗れた長崎の前田健滋朗ヘッドコーチは、「ライオンズ選手の負傷は非常に残念だが、彼がいなくてもインサイドが強いチームであり、そこはしっかり守らなければいけない。もちろん、大塚選手の3ポイントシュートも警戒していた。チームとしてどちらも守りに行ったが、例えばトランジションでの失点など守ることが難しい状況になってしまった」ことでスタートダッシュを許してしまった。B2最高勝率を誇るA千葉であり、千葉ポートアリーナでは連敗をしていないことを自信に変え、がけっぷちから舞い戻って逆王手をかけた。
B2ナンバー1の勝率を誇るA千葉に対し、長崎は得点(平均89.7点)、フィールドゴール成功数(平均32.4本)、3ポイントシュート成功数(平均11本)、アシスト(25.3本)、スティール(9.1本)とさまざまな部門でリーグ1位を記録。HARD(一生懸命)、AGGRESSIVE(激しく積極的)、SPEEDY(速い)、INNOVATIVE(革新的)、TOGETHER(一体感)の5つを掲げる『ヴェルカスタイル』を体現した第3戦。