「これからプロキャリアを続けていく上で、すごく大事な1年でした」加藤嵩都
2連敗で4位に終わったさいたまだが、「ファンの皆さんに向けて、あきらめない姿を絶対に見せたかった」というルーキーの加藤嵩都は最後まで身体を張ってディフェンスし、ゴールへ向かって18点を挙げた。
プレーオフ最初の岡山戦は20点、25点と活躍。しかし、続く静岡戦は「やっぱりマークされているのかな」と感じていた。シーズン中からさまざまな相手にドライブを警戒され、それを打開するために3ポイントシュートにこだわる。岡山戦と静岡戦は1、2本しか決められなかったが、横浜EXとの第1戦で5/6本、第2戦は3/6本、最後も4本沈めた。
セミファイナルも3位決定戦も、第3戦までもつれたタフなプレーオフは「昇格できず、もちろんキツい気持ちはあったんですけど、自分がメインとして出場したことがはじめてだったので、すごく楽しかったです」と加藤にとっては充実した8試合だった。昨シーズンは特別指定選手としてB2の熊本ヴォルターズでプレー。しかし、出場時間は平均2.5分とベンチで過ごす方が長かった。さいたまへ移籍し、「泉ヘッドコーチがずっとスタートで使ってくれたこの1年で、自分としても上手くなれたという実感があります。これからプロキャリアを続けていく上で、すごく大事な1年でした」と基盤ができた。
泉ヘッドコーチは、「切り込んでいくガードが僕は好きなので、見ていても楽しい選手。彼が来てくれたおかげでここまで勝ち上がれた。一緒にシーズンを戦えてうれしかった」と賛辞を贈る。オフェンシブな明星大学出身であり、攻撃面に注目されがちだが、加藤自身は「もともとディフェンスが好き」と言い、前からプレッシャーをかける姿を最後まで見せていた。試合中、チームメイトのライアン・ワトキンスは何度も加藤を抱き締め、何やら熱い言葉を交わす。
「ライアンに限らず、外国籍のチームメイトから『リーグNo.1ガードだ』とメッチャ言ってくれます。それほど信頼してくれていました。残り1分になり、『今シーズンありがとう』と言ってくれて、泣きそうになりました」
B2昇格の目標は果たせなかったが、「そこへ向かう過程を振り返れば、大きな経験を得ることができたと思っています」という加藤にとっては、納得のいくルーキーシーズンとなった。
現在行われているB2プレーオフを見れば、B3リーグから昇格したチームが半分を占める。「B2と比較しても全然大差ない。熊本とさいたまを経験したからこそ言えることです。B3で通用したことはB2でも必ず通用します。それは胸を張ってプレーできることだと思います」と加藤は言い切る。泉ヘッドコーチは「近い将来、今のB2とB3のチームが入れ替わっているかもしれない」というほど実力をつけている。B3リーグで上位を争うすべてのチームのヘッドコーチや選手も、同様の手応えを感じていた。来シーズンより新たに参戦する福井ブローウィンズと、徳島ガンバロウズも勝つためのチーム作りに勤しんでいる。
4位のさいたまは、ふたたびB3リーグで長い1シーズンを戦わなければならない。悔しさを糧にクラブとしての歴史を積み上げることが急務となる。しかし、B3リーグは選手の引き抜きが激しい課題点もある。「チームとしてしっかり積み上げるためにも、同じメンバーを軸としながら補強し、来シーズンこそ昇格できるようにしたい」と泉ヘッドコーチは力を込め、再スタートを切る。
文・写真 泉誠一