「特に富樫選手が絡む形でヴィック・ロー選手にオープンシュートを結構打たれてしまいました。ディフェンスのコミュニケーションを、いかに精度を高く遂行できるかが課題です。オフェンスでは自分たちのセットプレーやピック&ロールが崩れたときに、ボールが止まってしまうところがありました。自分たちがもっとボールムーヴをして、流れをどんな状況でも作れることが勝利のカギになります」
ホームの声援を受けた千葉Jが、そのままリードを広げるかと思われた。しかし終盤、猛追する琉球が強さを見せる。「ディフェンスでストップできているときに、自分たちの流れもできていた。トランジションのアタックも生まれた。あとはインサイドアウトのゲームがかなり機能していた。ディフェンスでリズムを取れたところが、チームにとっても良かった」と桶谷ヘッドコーチは評価し、4点差まで詰めて終えられたことが次につながる。悔しい結果に終わったが、今村はそれ以上にオフェンスでの手応えを感じていた。
「シュートの調子があまり良くなかったのでペイントにアタックをして、いかに自分がチャンスをクリエイトできるか、アタックしきれるかが試合前からカギだと思っていました。試合を通して自分たちのやりたいことができた試合でした。課題もありましたが、チームとして手応えを感じられたので、この反省をしっかり活かして次につなげていかないといけないです」
翌日、千葉Jは原がスタメンに戻って来た。天皇杯決勝と同じメンバーを相手に、琉球が78-76の接戦を制し、大きな1勝を得る。同時に、チャンピオンシップへの出場権を手にした。
昨シーズン準優勝に終わった琉球は、「獲れるタイトルは貪欲に狙っていきたい」と目標を掲げ、早くも2度のチャンスが訪れる。ひとつはホーム沖縄アリーナで行われた第1回東アジアスーパーリーグ、そして天皇杯である。しかし、東アジアスーパーリーグは準決勝で、天皇杯は決勝でいずれも敗れており、狙える残るタイトルは2つとなった。島根スサノオマジックを3ゲーム差で追いかける琉球は、西地区優勝のチャンスがある。昨シーズンから3度優勝に届かず、「負けた悔しさを一番知っているチーム」という今村は、微調整しながら目標へと向かう。
「残るタイトルはBリーグ優勝であり、もちろん西地区優勝をしてチャンピオンシップに臨めることは非常に大きいことです。でも、僕は何よりもチャンピオンシップに向けて、自分たちが今やっていることをどんどん成熟させて行って、よりタフに、優勝するに値するチームになることが一番大切だと思っています。今はそのためにもたくさん経験する時期だという意識をしっかり持ちながら、自分たちの目標を明確にしていきたいです」
貪欲に二兎を追わず、脇目を触れずに一番大きなものを獲りに行く。琉球もまた未完成なチームである。
残る13ゲームの多くは、水曜と週末のタフなスケジュールが続く。コンディションとケミストリーを高めながら、チャンピオンシップやファイナルへ向かってピークを合わせられたチームが、きっと運もつかむことができるのだろう。
文 泉誠一
写真 B.LEAGUE