さらに、数字では語ることのできない重要な問題がバスケットには存在する。
チームの連帯だ。
シェーファーの所属するシーホース三河が今シーズン、これほど苦しい戦いを強いられるとは予想できなかったのではないだろうか。
Bリーグで3度の得点王を獲得したダバンテ・ガードナー、そして8シーズンNBAに在籍したカイル・オクイン(三遠ネオフェニックス)が新たに加入し、シェーファーとアンソニー・ローレンスⅡのビッグ3運用ユニットも昨シーズンから引き継がれた。
とんでもない破壊力でリーグのトップクラスに切り込むかと思われたが、オクインの離脱やローレンスの負傷などもあり、思うような成果を挙げられずにいる。
「もちろんまだプレーオフのチャンスがゼロになったわけではないので、そこを目指して頑張っていますし、本当に一勝一勝を積み上げるつもりでやっています。
でも選手同士でよく喋るのは、こんな状況になってしまっていますけど、すごくたくさんの方に応援に来てもらっているので、その人たちのためにももうちょっと勝てるところを見せられたらなって話しています。
あとはここから全敗していたら自分のためにもならないので、勝てるところを勝って次に繋げていきたいという気持ちが強いです。」
これまでのシェーファーは、自分が成長するための環境を求めて目まぐるしく居場所を調整してきた。
同じチームに三年間在籍するのはバスケットに打ち込んで以来、初めてのことだ。
そこには安定がある一方でモチベーションを調える難しさもあり、「環境に甘えてしまっていた」時期もあったという。
しかし、現状認識に優れる理系脳は修正が早かった。
「本当に変えるために、かなり意識を変えた」というシェーファーは個人として新たなステージへと移行し、同時にこれまでとは違う、集団としての発展にも加担する機会を得た。
「キミさん(鈴木貴美一ヘッドコーチ)はいろんなことをとやかく言うのではなく、選手に委ねる部分の多いヘッドコーチです。なので試合の中でも練習の中でも、オフコートでも選手同士のコミュニケーションを増やすのが大事だと感じています。チームがいい状態のときは選手同士でコミュニケーションをしてちょっとのミスを喋って直していくっていう、当たり前なんですけど、それができていました。
いま、すごくそういうところがチームとして良くなってきていて、いろんなところでコミュニケーションが増えています。いろんな選手が調子が良かったり悪かったりがありますけど、その中で励ますとか、ちゃんとコミュニケーションをとることがだんだんだんだん増えてきています。チームとして、一体感がちょっとずつできているのかなと思っています。」
理論と感覚。
個人とチーム。
わずかばかりの停滞から様々を得たシェーファーの渾身のキャリアは、まだ始まったばかりだ。
シーホース三河 #32 シェーファーアヴィ幸樹
『アインシュタインはマジックジョンソンのパスを見破るか』
前編 https://bbspirits.com/bleague/b23032901sm/
中編 https://bbspirits.com/bleague/b23033002sm/
後編 https://bbspirits.com/bleague/b23033103sm/
文 石崎巧
写真 B.LEAGUE