いくら数字によって傾向が示されようとも、繰り返されるポゼッションの中で全く同じプレーが起こることはあり得ない。
過去を告げる数字によって未来は変えられるため、昨日の正解が今日も正解であるとは限らないし、前のクォーターの正解は今のクォーターの不正解かもしれない。
数字と現在の間には変動幅が存在し、その溝を埋めるには人間の感性が大きく影響する。
いま、シェーファーが身につけようとしているのは、理論に裏打ちされた感覚だ。
「ニック・ケイ選手(島根スサノオマジック)、彼をけっこう参考にしていたかもしれないです。サイズとしてはセブンフッターでもないしめちゃめちゃゴリゴリってわけでもないのに、あれだけリバウンドを取って、インサイドで仕事して、スリーも打てて。しかも必ず他のチームメイトがいてほしいところにいるじゃないですか。相手チームのオフェンスからするといつも嫌なところで守ってる。
彼はそれをもう感覚でやってると思うんですよ、あそこまでいくと。考えて考えて考えて考えてプレーするのをずっとやってて、ここまで来ると考えずにパッとその場を見た瞬間に、このプレー、っていう感じで勝手に導き出すんだと思うんです。ニック・ケイ選手だからとかではなく、本当に賢いプレーヤーは多分そうなので、そういうところは目指したいですね。」
現代のバスケットでは、以前よりも3ポイントの試投数が多くなってきている。
NBAでもシュート全体に対する3ポイントシュートの割合は年々増えてきているし、トム・ホーバスHC率いる日本代表などは半分以上のオフェンスで3ポイントを選択している。
この傾向は得点期待値の概念を考慮したもので、これまでの統計の結果に基づいた意図的なチーム戦略だ。
中距離のシュートやポストプレーよりも期待値の高い3ポイントを積極的に打ち、それに対して過剰な反応を見せるディフェンスにはドライブを仕掛け、より簡単なレイアップにつなげる。
この戦い方、どっかで見たことあるなと思ったら、韓国代表だった。
体格もさほど変わらないのに、彼らが展開する3ポイント、ドライブ、キックアウト、3ポイントの無限ループは幾度となく、日本の世界大会への道を阻んだ。
当時はもちろん、得点期待値などの概念は存在しなかったので、韓国のバスケットボール名人たちが考えに考え抜いて導き出したものだったのだろう。
達人の磨き上げられた感覚は高度な統計の結果と重なるという、良い例ではないかと思う。