『アインシュタインはマジックジョンソンのパスを見破るか』(中編)より続く
ものごとを数字で解釈する動きは、バスケットボールにおいても日に日に勢いを増している。
様々なアルファベットと数値の羅列がプレーのよしあしを知らせ、修正と改善を申し立てる。
数学は言語。
数字が打ち明ける思いに耳を傾けるには、それなりの語学を身に付けなければならない。
バスケットボールの理に迫るためには、必要な教養だ。
そういった仕事はコーチの領域であることがほとんどで、選手はコート内の出来事に目端を利かせる。
しかし、数字の語る言葉をより聞き取ることのできる選手であればあるほど、プレーの精度を向上させられる。
「小さい頃から数字がすごい好きだった」と語るシェーファーアヴィ幸樹も、そんな選手の一人だろう。
「例えば僕がいまだに頭の中でやっちゃうのが、車のナンバープレート。あれで遊ぶんですよ。車に乗っててパッとナンバープレートを見たときに、その数字を組み合わせて100を作ったりっていうのを小さい頃からやってて。今でも、勝手に100になる数字、例えば1387。13と87だから足したら100になるじゃないですか。そういうナンバープレートを見るとテンションが上がるんですけど、それはさておき…、昔から数字が好きだったっていうのもあって、スタッツとかで他の選手のパーセンテージだったり、そういう数字を見るのがけっこう好きです。試合中も数字を頭に入れてから試合に入るので、相手チームの二人の選手がノーマークになっていたときに、確率の高い選手の方を守るようにする。まあ今どきは当たり前ですけど、そういうのはけっこう意識しているのと、数字をベースに理論的に考える思考なのでバスケもそういう考え方でプレーできたらなとは思っています。」
これまでシェーファーが歩んできた道のりは合理性で満ちていた。
あらゆる場面で正解を導き出し、次々と難関を攻略してきたが、予測できない変数もバスケットには数多く存在する。
「同時にそれが災いして考えすぎちゃうときがけっこうあるんです。もう完璧に完璧にしようとしすぎちゃって、結果として見えなくなってしまっていたりとか。正しいプレー、正しいプレー。セカンドサイドにきたらこっちにハンドオフを出すっていうことを、それが正しいプレーと思い込んでやってしまったり。でも多分考えるべきなのは、誰がコーナーにいるのか、誰が自分にパスをしたのか、誰が下にいるのか。他のいろんな要素を考えてそのときの『正しいプレー』を導き出さなきゃいけないんですけど、そういうのができていませんでした。」