「やっぱりバスケがしたいという思いが勝ち、今に至ります」伊藤領
八村阿蓮(群馬クレインサンダーズ)、大倉颯太(千葉ジェッツ)、坂本聖芽(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)、佐土原遼(広島ドラゴンフライズ)、松本礼太(琉球ゴールデンキングス)はいずれも東海大学を卒業し、現在B1でのルーキーシーズンを送っている。彼らが4年のとき、東海大学のキャプテンを任されていたのが伊藤領だ。新潟県出身、地元の開志国際高校時代から将来を嘱望されており、年代別日本代表としても活躍。非凡な才能が揃った大学の同期だが、インカレメンバーの中で唯一、プロへ進まなかった伊藤は2022年1月に引退を決めた。次の目標が定まったからであり、ケガが理由ではないと自身のツイッターでつぶやく。
そんな伊藤のケガ遍歴は少なくなく、大学時代はそのプレーを見る機会も少なかった。高校2年時に右膝蓋骨を骨折。大学2年時には左膝前十字半月板を手術し、コロナ禍も相まって十分なリハビリができずに長引いてしまう。それでも大学3年のオフには新潟アルビレックスBBの特別指定として、3試合出場機会を得た。しかしそのとき、「膝に違和感がありました。検査をしたら、膝全体に膿が溜まっていて…」とふたたびメスを入れなければならなかった。最後のインカレには間に合ったが、1回戦に出場したのを最後に東海大学での4年間を終えた。
バスケ選手として区切りをつけ、新たな目標に向かった2022年春。「海外留学を視野に入れて毎日英会話の勉強をしていました。もう一回大学へ進学するための情報を集め、そのための勉強をしていました」という伊藤は、アメリカでコーチングを学ぶための準備に勤しむ。時を同じくして、仲間たちが進んだB1はクライマックスへと向かっていた。
「B1チャンピオンシップを見ていて、もう一回選手としてバスケがしたいなぁ、と徐々に思いはじめました。でも、その気持ちを押し殺して次の目標に向かってはいたんですが……やっぱりバスケがしたいという思いが勝ち、今に至ります」
2022年6月30日、「みんなの姿を見て自分ももう一度バスケに選手として挑戦したいと思いました」とツイッターで復帰を宣言。その約1ヶ月後、湘南ユナイテッドBCに入団。同期たちと同じルーキーシーズンに間に合い、プロバスケ選手としての人生をスタートさせた。
約半年のブランクの間も、「体調管理と身体の維持をやめるのは自分的にはできなかったので、現役復帰に向けてある程度はスムーズに入れたかなと思います」と大学時代のルーティンは続けていた。夏の暑い最中には、練習終わりにひたすら走り込んでコンディションを上げて行った。9月20日のプレシーズンゲームが待ちに待った復帰戦。伊藤の心境は「特別緊張もなく、本当に久しぶりにコートに立ったなぁっていうくらい」だった。しかし、ホームの会場を見上げると違う感情も沸いてくる。