ベンチから俯瞰して見えたチームの課題
B3から昇格してきたA千葉の印象について宮永ヘッドコーチに伺うと、「良いシューターがおり、何でもできるライオンズ選手などインサイドをがんばるビッグマンがいるので非常にバランスが取れていて、ボールと人がすごく動いている素晴らしいチーム」と称える。A千葉のレマニスヘッドコーチも「佐賀が首位にいるには理由がある。破壊的なディフェンスの戦術を取り入れ、しっかりとプレッシャーをかけ、我々のボールハンドラーもかなりオフェンスでは嫌がっていた。そのためにターンオーバーが多くなってしまった」と苦戦を強いられている。
昨シーズンより特別指定選手として佐賀の一員となったルーキーの角田太輝は、初戦に26点を決めた。「上手にボールハンドルし、スクリーンもうまくかわされてしまった。プルアップスリーもしっかりと決められ、この試合を振り返ってゲームプランを考えないといけない」というレマニスヘッドコーチの脳裏に焼き付く活躍だった。しかし、対策された翌日は2点に抑えられたが、代わって西川が23点と活躍。ベンチ裏では元気そうにチームを鼓舞していたレイナルド・ガルシアがインジュアリーリストから抹消され、チームのトップスコアラー(平均20.8点)がまもなく戻って来る。もし次に対戦があれば、レマニスヘッドコーチはさらに頭を悩ますことになるだろう。
A千葉にとっても、岡田優介が本格復帰を果たした。利き手を骨折するはじめての経験を乗り越え、初戦は3本の3ポイントシュートを決めた。しかし現状は「ずっと違和感が消えなくて、今でも正直万全ではない」と吐露する。それでもホームの声援を背に「アドレナリンも出ていたので、その違和感を忘れられたのかな。今まで何十年も積み重ねてきた動きに合わせてただ打つだけみたいな形だったと思います」と身体が覚えている。
東地区首位を走るA千葉だが、先月は同2位の越谷アルファーズに2連敗を喫した。1月には4連敗することもあった。コートに立てない岡田にとって、試合を俯瞰して見られたことがケガの功名である。課題点を以下のように指摘する。
「やっぱりエクスキューション(遂行)ですよね。チームが求めるバスケをするかしないか、フリーランスかどうか。簡単に言えば1on1なのか、チームオフェンスなのかというところ。そのバランスが崩れてしまうことが少しありました。自分はどちらかと言うと、チームオフェンスを大事にするタイプ。チームとして勢いはあったけど、その遂行力が少し欠けているな、と俯瞰して見たときに感じていました。それがいろんな選手にとってのストレスとなり、ボールが回って来ないということもあったので、全体を見ながらもう少しこうした方がいいんじゃないとか、コミュニケーションを取ったところは、かなり役に立てたのではないかと感じています」
同じく今、小林大祐がベンチでじっと戦況を見つめている。ベテランが課題を指摘しながら勝利への方程式を導き、昨シーズンのB3から止まらずに連続昇格を目指すA千葉。接戦を落とした佐賀だが、ガルシアが戻ればまたチームも変わる。この両チームとともに、越谷と長崎ヴェルカがプレーオフ進出を決めており、残るはあと4チーム。東西上位各3チームはいずれもB1ライセンスが無事交付され、ファイナルまで勝ち上がるだけである。そのためにも残るレギュラーシーズンで白星を積み重ね、ファンとともに戦うホームコートアドンバテージを勝ち獲らねばならない。
文・写真 泉誠一