在籍する年月の数だけ、新しい選手を迎え入れてきた。
現在チームの最年少は高橋快成、19歳。
正直、太田との間にどんな会話が行われるのか想像もつかない。
「いや、普通に喋るよ。もうあいつもいじってるから、俺のこと。」
自分の半分しか生きていない人にもいじらせてあげる。
海より広い太田の器は「ある意味武器」と自身も認めるように、チームの潤滑油として大きな役割を果たしている。
一方でオフコートでのやりとりだけではなく、自らも経験したルーキーの難しさにも思いを巡らせる。
「やっぱり一番年下で入ってきて、一番怒られるわけですよね。プロでやるのは初めてだし、わからないことも多いし。でも怒られてる中で最近はオフェンスで萎縮しちゃうことがあるから、必ず『打ってこい』って言ってベンチから送り出したりとか。なにか特別にああしろ、こうしろ、なんてのはポジションも違うし言えないけど、思い切ってやってこいっていうのは言うようにしてるね。
俺のプレーの性質上、(他の選手に)思いっきりやらせてあげたいから、快成に限ったことじゃないけど、もっと思いっきりやってこいだとか、スクリーンはどっちがいいだとか、そういう声はかけたりする。半澤(凌太)とか若いやつらは快成みたいに、失敗しても大丈夫だから、ってそういうフォローはしてるかな。」
これまでにチームを変わることはなかったが、その分、様々な変化を見てきたことだろう。
世間的に大きく変わったと見られている今シーズンの三遠ネオフェニックスを、太田は内側からどう見ているのだろうか。
「まず環境的にスタッフがバッと入ってきて、練習とかトレーニングに取り組む質とか、そういうものは格段に上がった。勝ててなかったときはチームが同じ方向を向けていなかったけど、大野(篤史)ヘッドコーチに代わって『勝つ』っていう方向にみんなが向かっていきだした。全員が本当の意味でしっかりと目標地点に向かえている。同じ方向を全員が見てる、っていうふうに変わったかなと思う。なにかを特別にしたわけじゃないけど一気に勝ったりできたのは、全員の足並みが揃ってしっかりと戦えてるからかなと思う。まとまりかたが本当に違う。」
これまでとは異なる確かな手応えを感じながら、新しい三遠ネオフェニックスの『目標地点』を太田はしっかりと見つめている。
「やっぱり目標はCS出場。そして優勝。チームとしては全員でまとまった、一つとなったチームで激しいディフェンスから相手のミスを誘って、そこから。誰が点を取る、とかそういうのではなくて、全員で速攻とかアーリーとか、そういう簡単なものでどんどん積み上げていって。誰かとか、独りよがりじゃないチームで最後まで戦って、目標を達成できたらな、と思います。」
三遠ネオフェニックス #8 太田敦也
『積極的な自己否定の先にある絶対的肯定』
前編 https://bbspirits.com/bleague/b23022201snf/
中編 https://bbspirits.com/bleague/b23022402snf/
後編 https://bbspirits.com/bleague/b23022703snf/
文 石崎巧
写真 B.LEAGUE