パトリックHCが好んで使う「ハビット」は、「習慣」というよりも「癖」と解釈すると理解がスムーズかもしれない。
早起きする習慣とか、毎日ランニングする習慣とかの意識的な行動ではなく、特定の状況で無意識に起こしてしまう動作のことだ。
ボールをどこに置くか、手をどのように使うか、ステップをいかに踏むか、動き出すタイミングなど、プレーの細やかな部分まで彼は目を行き届かせる。
高いレベルになればなるほど、ほんの少しの技術の差が最終的には大きな結果に結びつくことをよく知っているのだ。
長い期間を経て定着してしまった選手の無意識を掘り起こし、より効率的なプレーのために習慣化された技術、「癖」へと変える。
選手各個人とチーム全体の両方に対し、自身が求める基準を求め続けていくのは気が遠くなるような作業だが、それこそがパトリックHCの理想とするスタイルへの一番の近道でもある。
「プロセスが大切。最後の目的はどんなチームも、勝ちたい。どんなチームも優勝したい。でも優勝した経験のあるコーチと選手がわかっているのは、毎日のプロセス。少しずつレベルが上がっていく、習慣を変えていく、というのがより強いチームになるためには一番大切。まず大切な文化はキーププレイイング、諦めないということ。それとお互いを信用して、チームファーストでやっていくことが非常に大切だと思います。千葉Jはタレントも揃っているし、何よりもファンパワーがすごいです。練習試合(プレシーズン)もお客さんがいっぱい。ファンがたくさん試合に来てくれますので、そのファンのサポートと選手のタレントで今は頑張っていますけど、少しずつチームのレベルを上げていきたい。よりいいディフェンスとオーガナイズ(組織化)しているオフェンス。1対1じゃなくて、ステップバックスリーじゃなくて、チームオフェンスでインプルーブ(向上)していきたいと思います。」
観客席の熱狂という点においても、ヨーロッパと日本に違いがあることは否めない。
しかし日本との関わりが長く、日本人の特徴をよく知るパトリックHCは、表にこそ現れないものの、日本のファンの熱量がヨーロッパと比べても差がないことを理解している。
「日本に来て最初のプレシーズンゲームで気付いたけど、日本のファンはポライトすぎるんじゃないですか(笑)。礼儀正しく楽しんでくれてますよね。審判に絶対ブーイングしないし。ドイツのファンはフーリガンみたい、サッカーの。審判にものを投げているし(笑)。まあ今はコロナの時期なのでみんなマスクして大きい声を出していないですけど、毎試合、皆さんのサポートはすごいと感じてます。私は船橋の近くに住んでいるけど、どこにいってもファンは『ハロー』とか、ジェッツポーズとかいろいろしてくれる。これはだいぶ昔のJBLとは違うし、多分選手たちもそれは気付いているから、選手たちがロールモデルになっている。ファンを見ていると、千葉、船橋のあたりでバスケットの与える影響は大きいものなんだと思いますので、選手も、コーチも、モチベーションを高く維持できてます。」
千葉ジェッツ ジョン・パトリックヘッドコーチ
日本に戻りたかった
前編 https://bbspirits.com/bleague/b22112501cj/
中編 https://bbspirits.com/bleague/b22112802cj/
後編 https://bbspirits.com/bleague/b22112903cj/
文 石崎巧
写真 B.LEAGUE