これはなにも日本人選手が欧米に比べて精神的に未熟であるとか、体力的に劣っているとか、そういった話とは一線を画す。
世界のトップクラスであっても、同じ問題を抱えているのだ。
「FIBAのカレンダーでも試合数が多くなっています。ヨーロピアンチャンピオンシップスでも、アジアンチャンピオンシップスでも、ほとんどの大会で見られることなのですが、(土曜日に試合をした後の)日曜日の試合は第1クォーターがアップみたいな感じで、そのあとから本格的になるんです。それは(リーグのシーズン中ではない)夏の大会でも、若いユースのゲームでも、選手が疲れてくると見られるんですよね。そして、非常に怪我が多かったです。
(ヘッドコーチにとって)本当に怪我を予防するのは一つの仕事の大事な部分だと思います。私の息子たちはドイツのナショナルチームでやっていて、9ヶ月のシーズンの中でいきなりいなくなって1日2回、別のコーチの練習をやる。ナショナルチームのチームメイトはよく靭帯を切ったり、疲労性の怪我などのひどい怪我をしていました。ビッグネームのNBA選手もナショナルチームで怪我をしたことがある。今回もユウキ(富樫勇樹)がバーレーンとカザフスタンへ行って戻ってくるのは大変なスケジュールです。試合の3日前に戻ってくるから練習よりリハビリ、というかちゃんと寝ることの方が大切。そのあとの広島戦でどれだけやれるかはわからないけど、終わったら休ませます。こっちの練習はストップして、休ませる。そうじゃないと、精神的にも肉体的にも危ないと思います。」
選手がバスケットボールに人生をかけ、全てを注ぎ込んで高みを目指し、そしてようやく辿り着いた先で待っていた大怪我によって、道を閉ざされる。
誰にとってもの悲劇となるそんな未来を回避するために、代表とクラブは一丸となる必要があると、パトリックHCは語る。
「トム(ホーバス)とは夏に何回か話をして、一度シーズン中にも話をしたんだけど、ナショナルチームの仕事はナショナルチームが勝つこと。そして我々の仕事はクラブが勝つこと。そうすると、たまに選手がcaught in the middle(板挟み)になることがあります。両方からいいように使われないためにも、ナショナルチームのコーチとは話をしたほうがいいです。ユウキが日本代表で1日2回練習をして、あちこちで試合をする。そしてこっちに帰ってきていきなり全部チームのスケジュールをやっちゃうと絶対怪我をする。だから、向こう(代表)でなにをやっているか、少なくとも向こうのスケジュールとワークロード(練習量)は知ってたほうが選手のためにいいと思います。
昔のドイツはそこをうまくやってなかった。プロリーグのチームとナショナルチームがいつもバッティングしてお互いにコミュニケーションが悪くて文句を言っていた。今はゴーディー(ゴードン・ハーバート)という人がHCですが、ずっとクラブでコーチをしていた経験もあります。彼は常に選手ともコミュニケーションをして、クラブともコミュニケーションをして、それでうまくやっています。そのコミュニケーションは非常に大切だと思うし、日本代表対Bリーグではなくて、一緒にコミュニケーションを取ってやっていったほうがいいと思います。」