日本に戻りたかった(前編)より続く
ヨーロッパでの経験が豊富なパトリックHCは、日本への復帰を「新しいチャレンジ」とした。
そこには、システムへの挑戦が含まれる。
観客の動員数が向上し、試合を行えば行うほどクラブに発展をもたらすリーグの成功は、一方でチームの負担を大きく増加させた。
さらに近年では日本代表スケジュールの一新、アジア各国のクラブによるリーグ戦の開催などにより、シーズン中は息つく暇もないほどの多忙を極める。
「知り合いの日本人コーチにも相談をしたんですけれども、やっぱり練習をする時間がないと言われました。プレシーズンも短くて、日本代表の選手はFIBAのWindow期間にはいないし、プレシーズンにも合宿がある。練習時間が少ないのはわかっていたけれど、土日で試合があると月曜日がオフ。水曜日に試合があったら火曜日にその準備を少しだけやる。木曜日は選手が疲れていて、金曜日は土日の試合の準備を少しだけ。やっぱり経験してみたらけっこうハード。選手にとってもハードだけど、コーチとしても(限られた時間で)バスケットをディベロップするのはチャレンジですよね。」
トレーニング理論、治療技術の発達により、選手の肉体は進化を続けている。
だがどんなアスリートでも、試合において100%の出力を惜しめば勝利は遠ざかるばかりで、そして人間である以上、全力を出した後には回復の時間が必要だ。
選手を怪我のリスクから遠ざけながらチームの完成度を引き上げていく作業、その難易度は、ヨーロッパよりもむしろ日本の方が高いと言わざるを得ない。
「本当に選手をリスペクトします。でも、これは非常に怪我のリスクだと思う。(シーズン中は)ほとんど練習はできないというか、練習したらもっと危なくなる。ちゃんと休ませないと、お客さんも週末にいいバスケットが見られない。千葉ジェッツでは、ちょっと残念ですが、ほとんどウォークスルーとか。同じ試合数があってもいいけど、休みの日を試合のあいだに入れないと、選手は大変だと思います。
私はこれまでドイツのチームにいて、ずっとユーロカップかチャンピオンズリーグに出ていました。ルールとして選手の組合があって、そして連続で試合ができるのは日本の天皇杯のような、国内のカップ戦だけと決められていました。カップ戦では1回だけ、土日連続でやれるんですけど、それ以外のプロリーグは必ず1日、あいだに休みがあります。基本的には土曜にドイツのリーグをやって、そのあと火曜か水曜にインターナショナルの試合。ごくたまに金曜と日曜でドイツの試合があったりはしましたが、1日おきにやると怪我のリスクは少なくなる。
千葉Jではいま、二上(耀)選手が怪我をしていますので、少ないローテーションで2日間のプレッシングはあんまりできない。それと選手の頭の中でも、土曜日の試合が終わって筋肉痛とか、足が重かったりすると、本格的に最初からやろうというのも難しい。」