今シーズンの越谷アルファーズが開幕から快調に飛ばしていることは、「お客様に長谷川智也の通算得点をご存じの方はいませんか?」にも書いた通り。11月18日と19日のバンビシャス奈良戦も第1戦で79-53、第2戦で91-72と危なげなく白星を重ね、この時点で13勝2敗と早くも貯金は2ケタに到達した。
快調ではあるが、順風満帆かといえば必ずしもそうではない。アスリートとケガの間には切りたくても切れない縁があり、開幕からの9試合中7試合でスターターを務めた二ノ宮康平がその後の6試合を欠場中。19日の試合では鎌田真と畠山俊樹が相次いで負傷した。主力に故障者が発生すると、通常であれば選手起用のやり繰りに四苦八苦するところ。レギュラーシーズンだけでも約7カ月に及ぶ長丁場では、こういうことも常に起こり得る。
ただ、これも長谷川智也の記事で触れたことだが、越谷は今シーズンのロスターを編成した時点でしっかりとリスクマネージメントの手を打っている。13人という保有枠を使いきらないクラブも多々ある中、越谷は特別指定選手の2枠も埋めて15人の選手を確保。故障者が発生しても常に代わりの選手がいる状況を作ったことに、桜木ジェイアールスーパーバイジングコーチ(SVC)は「昨シーズン成績があまり良くなかったのは、ケガ人が多かったことが大きかった。今シーズン、厚みのあるベンチで戦えているのはありがたい」と感謝しきりだ。
鎌田と畠山が負傷した19日の試合は、その厚い選手層のメリットが顕著に表れた。試合後の会見で桜木SVCに真っ先に名前を挙げられたのは、28得点のジャスティン・ハーパーでもなければ、22リバウンドのアイザック・バッツでも13得点9アシストの松山駿でもなく、田村晋。負傷した鎌田に代わり、第1クォーター残り3秒にコートに立った田村は、直後にブザービーターを狙った宇都直輝のジャンプシュートをブロック。第2クォーター残り8分19秒にはドライブでバスケットカウントをもぎ取るなど、この試合は16分30秒の出場で8得点の活躍だった。
田村といえば、二ノ宮や横塚蛍、飯田鴻朗も含めた、いわゆる “Bリーマン” の1人。平日にフルタイムで仕事をこなしながらバスケットにも全力を注ぐ姿を見て、桜木SVCは最大限の敬意を表する。
「今日は鎌田がケガをしてゲームプランが全く変わってしまったが、そこからの3ポゼッションで田村が良いプレーをしてくれた。彼に対しては毎日感謝と感心の気持ちです。練習も試合もレベルが上がっているにもかかわらず、彼のパフォーマンスは変わらない。普段仕事をしている彼らが何故ここまでハードワークできるのか、全く理解できません(笑)。彼は、コーチ陣が自信を持って送り出せる選手です」
選手層が厚いことはチームにとってはプラスになるが、個々の選手にとってはモチベーションの維持が難しいというデメリットもある。実際、開幕直後は出場時間がゼロに終わる試合も、ベンチ入りすらできない試合も田村にはあった。クラブがB1昇格の目標に向けて強化を加速させる中、かつてB2昇格に貢献し、一昨シーズンのプレーオフ3位決定戦でも勝利の立役者の1人となった田村も、その立ち位置が中心から少しずつ離れているのは否めない。それでも、田村はその状況を受け止め、自分の役割を認識している。