2度目のB3降格を経た過去2シーズンを、横浜エクセレンスはB2昇格の権利を得ることができずに過ごした。一昨シーズンは終盤まで優勝争いに絡んだものの、最終順位は3位。東京から横浜にホームタウンを移した昨シーズンも、2位以内に入ればB2昇格のチャンスがあったが、19勝29敗で11位と大きく順位を落とした。
そもそも横浜に移ったのも、過去2度の降格の要因となったB2ライセンスのアリーナ基準をクリアするため。横浜武道館をホームアリーナにした昨シーズンは2022-23シーズン分のB2ライセンスも無事に交付され、あとはチームが成績を残すだけだったが、そこで逆に順位を落とす結果となったのはクラブとしても忸怩たるものがあっただろう。
それを受けて、今シーズンの横浜EXは大きく様変わりした。アシスタントGMを兼ねていた石田剛規ヘッドコーチが、HC業を継続したまま正GMに昇格。その石田HC兼GMは新たに7人の選手を迎え入れた。B1信州ブレイブウォリアーズで2シーズンプレーしていた西山達哉を呼び戻すなど、その補強の数々はファンを驚かせるものだったが、俊野達彦の獲得もそのうちの一つだ。
俊野といえば、大分・愛媛ヒートデビルズ時代に当時のbjリーグの日本人1試合最多得点記録を更新し、その後は2018-19シーズンを除いて地元の愛媛オレンジバイキングスでプレー。徐々にスコアラーからコントローラーにシフトし、昨シーズンはB2のアシスト王に輝くなど、B2でも指折りのガードに進化した。石田HC兼GMも、そのプレーの幅広さを買って獲得に動いたという。
「すごく昔の話でいえば、僕が千葉ジェッツにいるときに彼が練習生か何かの形で一緒になったことがあるんです。若さあふれるガツガツしたプレーヤーだったことを記憶していますが、その後キャリアを積んでいく中でリーダーシップやゲームコントロールが磨かれていったので、そこに期待して声をかけました。ここまでは本当に満足するパフォーマンスを出してくれています」
選手としての実力と実績に加え、愛媛の地は俊野の故郷でもある。さらに言えば、昨シーズンの愛媛は終盤の2月と3月の15試合で12勝3敗と躍進。4月の9試合連続中止がなければ、クラブ初のプレーオフ進出も十分に可能だった。本人にとって、移籍の決断はそう簡単なものではなかったはずだが、俊野は選手としての本能のようなものが働いたようだ。
「シーズンが終わった頃はもう一度プレーオフを目指してと考えていて、もちろん愛媛とも話はしたんですが、選手としては必要としてくれる所でプレーしたいという想いが常にあって、今一番必要としてくれているのはエクセレンスなんだなと感じるところがありました。クラブとしてトップリーグを目指す中で、強いチームを築き上げていくこと、成長できるカルチャーを作っていきたいというのをすごく感じて、その中で自分を必要としてくれていると思ったので、残りのキャリアを賭けるつもりで移籍してきました」
新たに加わった7人の選手の中には、西山の他にもライアン・ステファンやジョーダン・フェイゾンという、いわゆる “出戻り組” もいる。彼らは石田HC兼GMのフィロソフィーも、エクセレンスというクラブの在り方もよく知る面々だ。その中で石田HC兼GMが新しい血である俊野に期待したのがリーダーシップ。特に、田口暖や塚本雄貴といった若手の手本になっていることを既に実感している。