3得点2リバウンド1アシスト1スティール。バスケットボールの試合において、素晴らしい数字かと言われるとそうではない。しかし、数字だけで測れない要素があるのもバスケットボールの醍醐味であり、いわゆる “いぶし銀” という形容詞がつく選手の良さはそこに表れる。10月16日の鹿野洵生の働きは、まさにそう語るにふさわしい。
この日、アースフレンズ東京Zはホームで西宮ストークスと対戦した。かつてB1にも所属した西宮は昨シーズンのプレーオフチームであり、メンバー構成が大きく変わっていない今シーズンももちろんプレーオフ候補だ。一方の東京Zは栗原翼と岡島和真以外が全員入れ替わり、新任の橋爪淳ヘッドコーチも過去に代行で指揮した経験はあるものの、シーズンを通しての采配は初めてという、ほぼゼロからチームを作り直す再建モード。双方が置かれた状況を考えると、東京Zにとって難しい試合になることは想像できた。
しかし、試合は二転三転の様相を見せる。井手優希と栗原の得点で先手を取った東京Zは一時14点リード。第1クォーター終盤から反撃に転じた西宮が第2クォーターに一挙35得点を叩き出して逆転し、前半は42-52と10点差がついた。
東京Zは山形ワイヴァンズとの開幕戦に勝利した後に3連敗。どの試合も第1クォーターで10得点に届かず、前半だけで20点前後の差をつけられ、直前の第2節は2試合とも越谷アルファーズに対して最終的に30点差以上まで引き離される完敗を喫している。西宮を相手に快調な立ち上がりを見せたとはいえ、せっかくのリードを前半のうちにひっくり返されたこの試合も、そのまま悪い流れを引きずってしまうかと思われた。
東京Zがそれまでの3試合と違ったのはそこからだ。最大14点差からレジナルド・ベクトンを中心に追い上げを開始。ロバート・サンプソンの連続3ポイントなどで一気に迫り、第3クォーターは3点差で終えた。そして、第4クォーターに突入してすぐに鹿野の3ポイントで追いつくと、栗原のバスケットカウントや城宝匡史の3ポイントで再逆転し、最終的には95-87で西宮を撃破してみせた。
22得点14リバウンドのベクトンや20得点の城宝、18得点のサンプソン、14得点6アシストの栗原の活躍が勝利を呼び込んだことは間違いないが、その中で鹿野の働きも決して見逃してはならない。開幕5試合目で初めてベンチスタートに回ったが、この日も17分32秒出場。第4クォーターの10分間はフル出場で、冒頭に挙げたスタッツのうちリバウンド1本以外は全てこの第4クォーターに記録したものだ。たった1本の3ポイントも、たった1つのオフェンスリバウンドも、たった1つのアシストも、そしてたった1つのスティールも、試合終盤の局面で一進一退の攻防となった中では実に効果的だった。