既に多くのバスケットファンがご存じかと思うが、東京ユナイテッドバスケットボールクラブが10月9日のホーム開幕戦で9,295人というクラブ主幹試合入場者数最多記録を樹立。前日にアルバルク東京が塗り替えたばかりの数字を、B3の新規参入クラブがさらに上回ってみせたことは泉誠一氏執筆の記事にも詳しいが、この日は生憎の雨。もし雨が降っていなければ、1万人超えもあったかもしれない。
3,000人を超える動員もリーグ全体で年に数えるほどしかないB3において、やはりこれは特筆すべき出来事。当然ながら、対戦相手のさいたまブロンコスも含めた選手たちにとっても心に残る思い出となったに違いない。その中で、特に目を輝かせてプレーしていたように見受けられたのが齋藤豊だ。普段は物静かであまり口を開かないという証言もある齋藤だが、どうやら試合をするとアドレナリンが出るようで、試合後に話を聞くと試合の結果や内容を問わず明快に語ってくれる。この日は特にテンションが高かった。
「我々のような新規参入チームでこれだけ地域の皆さんに応援していただけるのは本当に感謝しかないですし、非常に嬉しかったです。こんな中でプレーする機会って、キャリアの中でもなかなかないんですよ。個人的に一番お客さんが多かったのが高校のときのウインターカップ。プロの試合では滅多にないことなんですよね。もちろん今までもそうでしたが、それだけ皆さんの期待を背負ってプレーしているので責任感も重大ですし、よりエネルギーを出して頑張っていかなきゃいけないなって改めて思いました。この雨の中でもこれだけの方が来てくださったので、あとは僕らが一生懸命やるところを見ていただいて、勝つことでより応援してくれるチームにならないと、せっかく来てくださった人たちに申し訳ない。もっと気を引き締めて頑張りたいです」
齋藤は、アマチュアクラブ時代から12年もの長きにわたって在籍した横浜エクセレンスを昨シーズン限りで退団し、その後少しの間、自らの進退を決めかねていた。7月になって東京Uへの移籍が発表されたが、現役続行を決断したのは必要としてくれるクラブがあったという点が最も大きいという。
「人生の中で、必要とされることってなかなかないじゃないですか、いくら自分がやりたいと思っていても。この歳で、手術もして動けなくなって、そんな中でも『若いチームに少しでも力を貸してほしい』と強く言ってくださったので、それだけ期待していただける以上は、恩返しではないですが一生懸命やりたいなと思いました。やはり、必要としてくれる所でやるのが一番幸せかなって」
42歳の齋藤にとって、自分を必要としてくれる人がいることは何よりのモチベーションになった。アウェーでしながわシティバスケットボールクラブと戦った開幕節の2試合で10本の3ポイントを放って6本成功という高確率を残したのは、オフの間の努力の賜物。16分54秒コートに立ったホーム開幕戦でも、その動きは軽快だった。一昨シーズンまで横浜EX(当時・東京エクセレンス)で共闘し、今シーズン再びチームメートとなった早水将希ヘッドコーチによると、齋藤と宮田諭は「たぶんここ10年で一番トレーニングしている」そうだ。