千葉ジェッツのスタンダードは引き上げられた。
高いレベルで展開されてきた千葉Jのバスケットは、そのスピード感と力強さのあふれるオフェンスが魅力だった。
しかし新しいシーズンを前にして、これまでのオフェンスが持つ特徴をそのままディフェンスにも反映させた新チームは、これまでの千葉Jを過去のものとした。
9月2日、3日のプレシーズンカップ2022inふなばしにおいて、千葉Jは彼らのディフェンス基準をリーグに通達した。
とにかくオフェンスとの距離が近い。
近づけば近づくほど、ボールを奪われる恐怖をオフェンスに与えることができる。
そして千葉Jの仕掛けるフルコートでのプレッシャーは、その恐怖をコートの隅々にまで撒き散らす。
屈強なディフェンスの圧力に、オフェンスはボールを運ぶことにすら苦しみ、望ましいポジションへパスをつなぐこともできず、なんとかボールを受けても簡単に前を向かせてはもらえない。
しかしオフェンスを圧倒するほどの圧力をかけ続けるとなれば、もちろんそれだけ消耗も激しい。
いわゆる「インテンシティ」というやつは持続力に乏しい側面があって、気持ちでなんとかできる問題でもない。
だがこれを継続させる現実的な対処として、千葉Jは「チーム力」を用いる。
実にコロコロとベンチから選手があらわれ、短いプレータイムにエネルギーを凝縮させる。
スタートで出ていた選手が第1クォーターの早いうちに体力を枯渇させてベンチに戻り、同じクォーター内で回復させてまた出てくるようなことが頻繁に行われている。
そのように繰り広げられる千葉Jのチームディフェンスが、対戦相手のヘッドコーチやガードの意図したプレーを分断させてしまうこともしばしばで、行き場を失ったボールマンが強引に突っ込んでターンオーバーを犯す場面も少なくない。
千葉Jを相手に攻めるプレーヤーたちのストレスが、画面越しでも伝わってくる。
これがたった一週間のチーム練習による成果だという。
既存選手も多いなかで、まったく違うチームへと様変わりしてしまった。
その激しい守りが日本人プレーヤーのみによるものでなく、外国籍選手も含めたチーム全員から発せられることで大きな脅威となる。
昨シーズンは3ポイントまで打てる赤木剛憲ことジョシュ・ダンカン(現・琉球ゴールデンキングス )がパワフルな活躍を見せたが、機動力に関して突出していたとは言い難かった。
しかし代わって加入したヴィック・ロー。
最近流行りの万能型プレーヤーである彼は、現時点ですでに今シーズンのバケモノ・オブザイヤーにノミネートしたといってよいほどの能力者。
3ポイントが打てる、ハンドリングが良くてドライブもできる、フローターまで打てる、アリウープパスすら出せるときて、ディフェンスの出し惜しみもしないとなると、相手チームにとっては厄介が過ぎる。
ローとジョン・ムーニーの起動性能はおそらくリーグ随一、彼らに頭を悩まされてちょっと抜け毛の多くなるヘッドコーチが今年は増えそうだ。
僕がガードだったら怖くてボールを運べない。運びたくない。