終始する更新と渇望(中編)より続く
「もう3年たったのかっていう印象が強いです」と語る石井。
「1年ごとに、その年その年でいろいろなことを感じている」という彼の言葉が示すとおり、この3年間は目の前のことに対して真摯に向き合った時間の積み重ねでしかない。
それにも関わらず、なおも話題を求める筆者は世界のナベアツのごとき執拗な「3」押しを展開し、戸惑う石井の視線を幾度となく宙に泳がさせ、閉口させた。
そしてついに耐えかねた彼は頭をポリポリとかいたのち、「そういえば初めて『3』をはみ出したかもしれないです」と絞りだすように応じてくれた。
富士通で3年、千葉ジェッツに入ってNBLで3年、Bリーグで3年。
そして2022年、サンロッカーズ渋谷で在籍4年目を迎え、これまでの枠から一歩を踏み出したのだと言う。
曲がるべきところを忘れてまっすぐとしたような彼の受け答えに感銘を受けながら、あ、そこ区切るんや、というツッコミを胸に秘めて話を進める。
取材者の未熟は、棚上げにしたままで。
これから始まる、なかば無理やりに仕立て上げられた逸脱のシーズン。
それを彼にとってだけでなく、チームに関わるすべての人々の特別にしたいと石井は願っていた。
個としてどうあるべきかの観念は彼のもとを離れ、明るい場所で笑いあえる瞬間を目指して集合体に思いをめぐらせる。
そして、あまり変化を見せない彼の表情からうかがい知るのは至難のわざかもしれないが、そこにはもちろん、彼らの戦いの反復を支えるファンの存在も含まれている。
昨シーズン、怪我人だったりコロナ禍だったりでベストなメンバーが揃わずに消化不良な思いがあって、出し切って終われた感じではなかったんです。結局チャンピオンシップにも出れなかったんですが、もう一回このチームでどこまで行けるかっていうのを見てみたい、結果を出したいという思いが強いです。今シーズンはまずチャンピオンシップに出場するのはもちろんなんですけど、やっぱり優勝したい。Bリーグ優勝を目指してやっていきたいです。