直近2シーズンこそ優勝に返り咲くことはできなかったが、日々スタンダードレベルを上げるA東京のスタイルは、今後も受け継がれていかなければならない。「一番大事なのは、どんなに苦しい状況でも選手たちは戦い、ファイトし続けてくれました。結果は出なかったですが常に戦う姿勢を見せ、そして献身的な努力をするプロ意識を持った選手たちに敬意を表したいです。アルバルクでプレーするならば、選手一人ひとりがこのような気持ちを持っていなければなりません」と、ルカヘッドコーチもそれを望んでいた。
Bリーグ、そして日本人選手のレベルを引き上げたピック&ロールとインテンシティ
2016年夏、新たに誕生するBリーグのコーチの前で、ショーン・デニスヘッドコーチ(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)とともにコーチ養成講習会の講師として登場したルカコーチ。その後、日本代表のテクニカルアドバイザーとして、2016年12月に再来日を果たす。68人もの選手をリストアップし、重点強化合宿をスタートさせ、世界スタンダードのピック&ロールを伝授。ディフェンスではインテンシティ・アグレッシブ・ソリッドネスを植え付け、昨今のBリーグの礎を築いてくれた。
全てのコーチや多くのプロ選手と関わり、その知識や経験を惜しむことなく日本のために注いできた。それゆえに、A東京就任後はルカコーチのスタイルを知る相手ばかりとの対戦でもあった。しかし、一貫した強化方針を貫き、勝っても負けても変わらぬ準備を徹底させ、A東京を優勝させたルカコーチは、「Bリーグのレベルを一気に底上げすることができたと思っています」と日本バスケ界を牽引する。
置き土産として、日本人選手がさらに向上して行くために2つのポイントを語ってくれた。
「1つ目はフィジカル面で、身体の強さや当たり負けをしないことが求められます。特に国際レベルと比較すればサイズは小さくなり、それを補うためにもフィジカル面の強さをもっと鍛えていくべきだと感じています。2つ目はスキルレベルの向上が必要です。トランジションでのスコア、1on1で打開できるプレー、ピック&ロールでの崩し方、一つひとつのパスの精度向上、そしてシュート力、この全ての分野のスキルレベルを向上させれば、一枚も二枚も皮が剥けてさらなる上達ができます。その課題をしっかりと克服し、持ち味であるスピードを生かすことが今後も大事になります」
強面のルカヘッドコーチだが、時折見せる笑顔がチャーミングであり、オフコートでは冗談を言うお茶目な性格である。自ら運転をして練習へ行き、試合前には「妻へのプレゼントを買っていたんだ」と隣接するららぽーと立川立飛で買い物をするなど、すっかり日本に溶け込んでいた。まだまだ日本での活躍が見られると思ったが、今回の退任発表はやはり寂しい。まずはゆっくり休んでいただき、いつかまた顔を真っ赤にさせて激高する姿を見せて欲しい。お疲れ様でした。
文 泉誠一
写真 B.LEAGUE