「その試合において相手の中で影響力のある選手のリズムが狂えば、自ずとそれが勝敗に直結すると思います。でもやってるときはわりとやられる前提で守ってはいます。じゃないとやられたときのショックが大きいというか。一回二回くらいだったら守れたりすることもありますけど、試合は40分なので、やられた後にやめちゃったりとか、違うことを考えてそれがプレーに影響してしまうことだけはないようにしています。だからやられてめちゃめちゃ悔しいのに、だいぶスカしてます。」
相手チームの中心選手に対しては、試合前の練習で入念な準備が行われるのが一般的だ。
基本的には一人で守るのではなく、チームで共通理解を持って相手の得意なプレーを妨げようとする。
どちらの方向に行かせてはいけないか、どの場所からシュートを打たれてはいけないか、どこでボールを持たれてはいけないかなど、様々な決まりごとが設けられる。
それらをどれだけ正確に行えたかがチームディフェンスが機能した指標として用いられる。
だが、当然のことながら相手も自由意思を持った人間なので、こちらが想定した通りに動いてくれるとは限らない。
予期できなかったケースにおいてまず問われるのは、瞬時の判断力、個人による駆け引きの熟度。
「チームとしての約束事と自分の思ってる感覚が違うときがあるじゃないですか。前まではそれがきついな、って思ってたんですよ。でも逆にそれをすり合わせるのも最近は楽しいと思えるようにもなって。グレーな部分で自分なりの遊びを、オフェンスでもディフェンスでも入れてみようって思えるようになってきましたね。チームとしての約束事ではない部分で、自分で勝手に約束事を作ったりとか。あとは、ふわっと、聞いてみたりしますね。スカウティングの段階で、コーチ陣も選手の意見をすごく取り入れてくれるので、感覚的に『こうしたほうがいい』って思うことを、ほんとふわっと言ってみて。感触が良ければ実際の試合でもやってみて、逆にもっと遊びを入れてみたりとか。遊びというか、自分なりの感覚をもっと出してみてもいいかなと思うときもあったりします。」
岸本の言う『グレーな部分』は、どんなチームにも必ず存在する。
試合では、白黒はっきりした部分の方が少ないとすら感じる。
そうしたグレーエリアへの向き合い方が、今シーズンの琉球が持つカラーだ。