大阪学院大学で教わった「人としてどうあるべきか」
U18日本代表に選出されたのをはじめ、学生時代から有望視され、大阪学院大学では主力としてコートに立ち続けてきた。大学2年次の2018-19シーズンには大阪エヴェッサでプレーし、16試合に出場。そのうち6試合は先発を任され、平均約15分出場し、5.3点を記録。常に試合に出て主力として活躍してきた吉井にとって、1度もコートに立てなかった昨シーズンは葛藤がなかったわけではない。大阪学院大学高校では高橋渉監督に、そして大阪学院大学では行広伸太郎監督から一貫して教わってきたのは「人としてどうあるべきか」である。「気持ちが落ち込んでいる姿を見せずに、自信を持って取り組み続けなければいけない」という学生時代から培ってきた信念で苦しい時期を乗り越えてみせた。
「スタンダードの基準を上げること、つまり適応することにメチャクチャ時間がかかりました。スタンダードを上げることに対しては終わりがなく、今でも適応しなければいけないところはたくさんあります。でも、昨シーズンはコーチ陣が求めるバスケに対し、どうやって体に馴染ませるかを常に考え、試合に出られなくてもベンチに入れなくても、とにかく『今の自分は信頼されるほどの技術ではないんだ』と自分に言い聞かせて、がんばって上を向いて練習に取り組む気持ちだけは常に持っていました」
恩師からの教えはプロとなった今こそ活かされている。特に大学時代は「とにかく自分で考えてどう成長するかを大事にしている監督でした。選手の自主性に任せ、成長するために何をすべきかを常に考える環境でした」。どうすればコートに立てるかを模索するとともに、A東京の環境をフル活用する。
「ルカ(パヴィチェヴィッチ)コーチに限らず、水野(宏太)コーチや森(高大)さん、池田(親平)さん、田中(亮)さんらスキルコーチには常日頃からいろんな疑問を投げ、相談し続けています。ディフェンスやオフェンスについての改善方法をいつでもアドバイスしてくれる環境は、僕にとっては本当にありがたいです」
自分で考え、行動に移してきたことで、「アルバルクのバスケスタイルにも少しずつ適応できているのかな。コーチや他人任せにせず、今ある状況を打開するために自分でどうすれば良いかを常に考えられる力はついたと思います」という吉井は、バスケの技術だけではなく、人としてもひと回り成長を遂げた。
後編:常にどんなポジションでもプレーできるように準備 へ続く
文 泉誠一
写真 B.LEAGUE