ただ、近年のアイシンは単なる企業チームにとどまらず、クリニックや社会貢献活動などプロクラブが実践している活動も積極的に展開してきた。これは、地域密着を強く意識した安田部長が、B1やB2の各クラブを参考に始めたもの。トップリーグに参戦している以上は果たすべき責任があるというのが安田部長の考えだ。
「どうしても我々は企業チームと見られて、会社の人だけが試合に見に行くものとか、一般の方が応援に行っていいのかなという雰囲気があるというのを聞いていたので、安城市や三河の地に根づいたクラブにしたいと思ったんです。いくらB3といっても、世間の人たちからはBリーガーとして見ていただけるんですよ。企業チームだから会社の仕事とバスケットだけやっておけばいいんだというのは、部長になる前からそこは物足りないところだと感じていて、新しいファンを獲得できていないんじゃないかということが一番頭にありました。地元の方がアレイオンズを知ることによってバスケットを好きになってもらったり、アレイオンズの選手のクリニックに参加したお子さんの中から、それがきっかけでBリーガーやオリンピック選手になったという人が1人でもいたらいいなと思うんです」
そして、そんなアレイオンズから刺激を受けてバスケットにのめり込んだ人物は実際にいる。誰あろう、実業団リーグ時代のアレイオンズで3年間プレーした後は長く現場から離れていたという安田部長その人である。
「Bリーグになる前に、自分の後輩が入ったということもあって久々に見に行ったら、すごくスピーディーな展開のバスケットをしていて、相手に外国籍選手がいても運が良いと勝ってしまうような試合をよく見て、そこから引き込まれていきました。平日に仕事をして土日にプロ相手にぶつかっていく姿を4~5年ほど見させてもらって、何か彼らの手助けができないかと思っていたところに『スタッフにならないか』と話があって副部長になったのが3年前。“一番”というと語弊がありますが、アレイオンズのファンですね」
見る者を惹きつける魅力にあふれたアイシンのバスケットは今シーズンも健在。ホームアリーナである安城地区希望の丘体育館でのラストゲームとなった4月3日のさいたまブロンコス戦は、そんなアイシンらしいバスケットが発揮された好ゲームだった。前半は35-35と競った展開になったものの、石原を中心にトランジションバスケットを展開。後半は開始約2分でナイジェル・スパイクスが4つ目のファウルを犯してピンチに陥ったかに見えたが、代わってコートに立ったマーカス・ダブが速攻に走ると、試合の流れは一気にアイシンに傾いた。12点リードで突入した第4クォーターも着実に点差を広げ、92-72で勝利。最後の安城ホームゲームを会心の白星で飾ってみせた。
「前半からヘッドコーチのゲームプランをそれなりにできましたし、後半はさらにディフェンスの強度を上げて走るバスケットをチーム全員ができた結果だと思います」(石原)
「安城で最後といっても僕自身はいつもと変わらないように試合に入りました。ちょっとエンジンがかかるのが遅かったですがアレイオンズらしい走るバスケットができて、良い形で終われたと思います」(宮脇)