前述したように、野口には新規参入クラブに対する不安感もあった。これは、レラカムイ北海道のクラブ設立時のメンバーである野口自身の過去の経験からきているものだが、その不安はすぐに払拭された。
「ゼロから作るのは2チーム目なんですよ。レラカムイの経験があったからこそ余計に怖かったです。もちろん最初は良かったんですが、4年続かなかった。3年目にはもう怪しかったので実際には2年ですね。でも、ヴェルカはB1レベルの環境と投資があって、全く比べものにならなかったです」
当然ながら、それは専用練習場兼クラブハウスを初年度から用意したジャパネットホールディングスのバックアップによるところも大きいのだが、伊藤GM兼HCがスタッフの人選にもこだわったことが、野口にも恩恵をもたらした。伊藤GM兼HCによれば、野口は「来たときよりヒザの調子も上がっているし、筋力も上がっているんです。10月より11月、11月より12月とパフォーマンスを上げて、今が一番良い。あの年齢でも成長できている」とのこと。その裏には、選手個々に合ったトレーニングを考えている高橋忠良アスレティックトレーナーと中山佑介ディレクター・オブ・スポーツパフォーマンスの2人の存在がある。もちろん野口自身もトレーニングに真摯に取り組んでおり、「ヴェルカはコンディショニングチームが素晴らしいので、『まだできる』ってこのチームに入って余計に思いますね。パフォーマンスが向上している感覚があって、まだまだバスケットにすがりたいです」と進化を実感。事実、第19節の東京八王子ビートレインズ戦ではダンクも披露するなど、体のキレは衰えるどころか磨きがかかっているようにすら感じられる。リバウンドやスティールから5人全員が一気に攻め上がるトランジションの速さ、ハーフコートでの連動した動きなど、運動量や瞬発力が求められるチームスタイルにも十分にフィットしている印象を受ける。
実績のある選手に求められる本来の役割に関しては、伊藤GM兼HCが「どうしてもファンの皆さんに見えるのは試合の活躍だけですが、普段のワークアウトに臨む姿勢を若手に見せてくれることは大きいし、後輩の面倒見の良さという点でも貢献してくれています」と高く評価。野口自身も「自分からはあまり語るほうではないですが、訊かれたことには答えますし、下を向いている選手がいたら手を差し伸べて、ポジティブな意識にさせるようにはしています。チームでは『パパ』って呼ばれているんですが、そんな立ち位置が良いのかなと思います」と、いわゆるベテランと呼ばれる立場を心得ている。