── その意味では、先ほども言っていましたが、パヴィチェヴィッチヘッドコーチの下でやれていることは大きな意味を持つわけですね。そのパヴィチェヴィッチヘッドコーチの下でピック&ロールをやって、新しい発見はありましたか?
ピック&ロールだけに限って言えば、新しい発見はそれほどありません。それよりも、これまでとは少し違うタイミングやスペーシングを感じました。それはルカヘッドコーチの戦略というわけではなく、B.LEAGUE独特というか、日本のバスケット特有のタイミングやスペーシングと言っていいでしょう。日本に初めて来たときに感じた日本特有のタイミングやスペーシングを学ぶことが、最初の2ヶ月間は大変なことでしたし、でも、そこへのアジャストが一番重要だと思って、やってきました。
── タイミングやスペーシングが違うというのは、やはり選手個々の身体能力や運動能力などの差があるからでしょうか?
いえ、私自身はピック&ロールを使ったときの相手ディフェンスの違いにそれを感じました。たとえば、ピック&ポップで私がトップ・オブ・ザ・キーにポップしたとき、逆サイドのコーナーからヘルプに来ることがあります。ヨーロッパでプレーしているときは、そうしたディフェンスをしてくるチームはありませんでした。だから私としては珍しいことだったのです。私が日本に来た当初は、どのチームにも“ピュアビッグマン”、つまりペイントエリア内で主にプレーするセンターがどのチームにも1人はいました。そうしたビッグマンを守るために、どのチームも私がこれまで見たことのないディフェンスをしてきたのかなと思うんです。そこが大きな違いだと感じていました。もちろん今は、日本のバスケットもスピードが上がってきていますし、スタイルも変わってきていて、単純なポストゲームは徐々になくなってきています。ただ、当時はそうした違いは感じていました。それでもアルバルクが優勝できた理由は、大貴や誓哉、元基といったユーザーたちがそうしたディフェンスにしっかりとアジャストして、自らを生かしながら、チームメイトもうまく生かすこともできていたからだと思います。
泥にまみれてもなお清々しく(後編)目的と動きを理解し、ディフェンスを理解する へ続く
文 三上太
写真 B.LEAGUE