なぜそんなに多用されているのか。
これは僕の個人的な見解だが、コスト面で非常に効率が良いからだと思う。
男の勝負といえば古来よりタイマンと定められており、仲間が後ろから跳び膝蹴りを喰らわすなどあってはならないことだが、このタイマン、つまり1on1は、消耗が激しいのだ。
よほどの実力差がない限り、1on1でシュートを決めるためには、全力に近いエネルギーを要する。
1回や2回ならまだしも、これを40分やり続けるのは不可能である。
その点、スクリーンを利用すればコストを複数人に分散できるため、1回のシュートにかける消耗を抑えられる。
これにより、継続的に確率の高いシュートを打ち続けることが可能になる。
では他のスクリーンプレーとピックアンドロールは何が違うのか。
大まかに分類すると、スクリーンプレーには2つの種類が存在する。
ボールを持っている人にかけるか、持っていない人にかけるか、の2つだ。
ピックアンドロールはボールを持っている人にかけるタイプのスクリーンプレーで、オンボールスクリーンとか言われたりする。
逆に持っていない人にかければオフボールスクリーン。
この2つにどんな差があるか。
それは意思決定からシュートまでのスピードにある。
オフボールスクリーンは一般的に、シューターにスクリーンをかけてフリーの状態を作り、そこにボールを持ったプレーヤー、意思決定者がパスを出すことで成立する。
ゴール下からアウトサイドの選手がビッグマンの壁を使って飛び出してくる(これもけっこう疲れる)場面が象徴的だが、その際、意思決定者とシューターのイメージが食い違ってしまうと、パスの行き先がズレるなどしてシュートに繋がらなかったりする。
ただでさえパスを1つ通さなければシュートにいけないプレーなのに、シューターの欲しい場所にパスが来ずもたついている間にディフェンスが戻ってきて、そのスクリーンプレー自体が失敗に終わってしまったりする。
だがオンボールスクリーンなら、そのような手間は存在しない。
ボールを持っているプレーヤーに直接スクリーンをかけるため、意思決定者=シューターとなる。
ドリブルひとつ使ってフリーになったあとは、打てる、と思った瞬間にシュートが打てるうえ、誰かとイメージを共有する必要もない。
守る側にとって、パス1本分の時間的猶予があるかないかは大きな違いを生むため、オンボールスクリーン、つまりピックアンドロールに対してはよりリスクを取った守り方を強いられる。
この辺りが、僕の考えるピックアンドロールの利点だ。
もちろん実際の試合ではディフェンスもただ突っ立っているわけではないので、全てが思った通りに進むわけではない。
だが同レベルのチームが対戦する前提において、再現性、持続可能性、そして攻撃力の点でこれを上回るプレーは今のところ存在しないと思う。
このプレーを成功させられるかどうかはチームの勝利に直接影響するし、プレーヤーの価値も大きく変化させる。
それくらい重要なプレーなので、できるだけご理解いただけるように噛み砕いてお茶の間に届けたいのだが、日本語というのはとても難しいですね。
文 石崎巧
写真 B.LEAGUE