“考える力”がバスケットの視野を広げてくれた
2017-18シーズンを前に琉球ゴールデンキングスへの移籍を決めたとき、「頂点を極めたチームからなぜ離れるのか?」という質問をよくされたという。「そうですね。せっかく日本一になったのに…とか、それは結構みなさんが思ったみたいで(笑)」。決断の理由はいくつかある。自分を栃木に繋いでくれ、在籍中も何かと気にかけてくれた佐々アシスタントコーチが琉球のヘッドコーチに就任したこと。石崎巧(引退)、古川孝敏(秋田ノーザンハピネッツ)、アイラ・ブラウン(大阪エヴェッサ)、二ノ宮康平(越谷アルファ―ズ)など加わった新メンバーの顔ぶれに心が動いたこと。「でも、何より大きかったのは自分がこのチームに求められたということですね。栃木は入れてもらったチームでしたが、琉球は求められたチーム。それも佐々さんが自分を必要だと言ってくれたことがすごくうれしかったです」。佐々体制の1年目となったこの年はプロ選手として “考えること” が格段に増えたという。
「栃木のときは本当に無我夢中で自分のやることだけを考えていたというか、それだけに集中していた感じでしたが、琉球ではチームのコンセプトを念頭に置いて、どこにアドバンテージがあるのか、武器となるものは何なのかをより考えるようになりました。自分だけのことだけじゃなくてチーム全体を見られるようになったのは栃木で少し成長させてもらったおかげかもしれません。自分のベースになるものは変わりませんが、選手としての視野は琉球で広がったような気がします。栃木とは違った琉球のバスケットスタイルにアジャストする難しさはありましたが、個性豊かなメンバーたちとプレーするのは楽しかったし、ステップアップできているという手ごたえも感じていました」
そんな須田にA東京から誘いの声がかかったのは琉球での2年が過ぎるころ。A東京は2017-18、2018-19とリーグ2連覇を果たした強豪チームであり、対戦相手として「個々の力が年々確実にアップしている印象」を持っていた。「特にルカ(パヴィチェヴィッチ)さんがヘッドコーチになってからその印象が強くなりました。オファーをもらったときは正直、驚きましたね。まさかリーグ2連覇したトップチームから声がかかるとは考えてもいなかったので、ほんと、めちゃくちゃ驚きました」。が、同時に沸き上がってきたのは「チャレンジしてみたい」という気持ちだ。「自分のキャリアの中でアルバルクのようなビッグクラブからオファーをもらえるチャンスはそうそうありません。自分を必要だと思ってもらえたチャンスを無駄にしたくないと思いました」。さらなるステップアップを目指して決断した2度目の移籍。だが、須田はここでこれまで経験したことがなかった高い壁に直面することになる。
(後編)ネガティブに思える出来事からも学べることはある へ続く
文 松原貴実
写真 B.LEAGUE