ぜひ誤解しないでいただきたいのだが、これは割とコミュニケーション能力に難のある人間同士の会話なのである。
譲次の「友達つくるのが上手くない」という自己認識は僕を意外な気持ちにさせたが、よくよく思い出してみると「確かにそうだったかも」と頷かされる節があった。
というか僕自身が人見知り過ぎてこの世のほぼすべての人間がコミュ力お化けに見えていただけで、その中に譲次も含まれていたが、一般的に見れば譲次だって昔から万能なコミュニケーション能力を保持していたわけではなかったように思う。
なので、この会話中で取り沙汰される現象は僕ら特有のものかもしれない。
他のバスケットボール選手はそんなこと気にもとめていないのだろう。
これは決して迷惑という話ではなく、友達が見に来てくれるのはとても嬉しい。
だが「どうしていいかわからない」が正直な心境だ。
実際にプレーに悪影響が出るかと言われれば、そんなことはもちろんない。
試合中はコートの中に意識を集め、試合が終わればともに戦ってくれたファンに精一杯応える。
その一連の流れに突如フレームインしてくる地元のツレ。
「5時間続く『秒で寝落ちするBGM』の動画」とか、「すぐに人生が良くなる99のコツ」とかから感じる違和感のようなものが襲いかかってくる。
緊張と弛緩の狭間に追い込まれた僕にできるのは、標準語とも福井弁ともつかぬ謎の言葉をフガフガと呟くくらいのものである。
最近ではメディアで取り上げられる機会も増えて、社会的な認知度もうなぎ上りなBリーグであるが、この程度の対応力しか持ち合わせていないBリーガーも去年まで存在したのだ。
引退してよかった。
こんなことを言っていると色々と不安になってくる方もあるかもしれないが、譲次は大丈夫である。(多分)
久しぶりに会う友達とのちょっとした距離感に戸惑ったりもするだろうが、ほぼ初めて会うような、随分と歳の離れた同僚とのそれに比べればどうということはない。
だがそんな壁も彼は、もうとっくに取り払ってしまっているようだ。
試合中に若手選手から真剣な表情で語りかけられている姿からも、その様子は窺い知れる。
石崎 でも今新しいチーム入って、まあ後輩とうまくやりがちな人って思ってたんだけど。
竹内 大学んときはな。でもそんな大学って、離れても3個やん。今はもう十何個離れてんねん。
石崎 あー、やっぱやりづらい部分はある?
竹内 いやでもそんな先入観は逆に持たないようにしようと思ってたんや、最初。向こうが気ぃ使ってくれてるのももちろんあるやろうけど。でも自分が予想してたよりかは全然すんなり溶け込めたかな、年の差があるけど。
実に頼もしい限りである。
吹田市民の皆さんにおかれましては、凱旋した地元の誇りを張り切って応援していただきたい。
文 石崎巧
写真 B.LEAGUE