ルーズボールを追っている姿を見せるところからはじまるプロ意識
プレー面だけではなく、昨シーズンから一番大きな変化が見られているのがプロ意識である。「格好つけるということではなく、子どもたちが見たときに、まずはルーズボールを追っている姿を見せなければいけないし、それができなければそもそもお客さんを呼べないよね」と泉ヘッドコーチは選手たちに説いている。勝利への執念が、会場に足を運んでくれた方々に感動や勇気として伝わる。根本であるプロ意識がこれまで以上に芽生えたことで、選手たちのプレーも上向きはじめた。その姿を見たファンや他のチームからは、ブロンコスの変化が評価されはじめてもいた。
「地元埼玉県のバスケをよくしたい、盛り上げたい」と自ら懇願し、昨シーズンは選手として泉ヘッドコーチはブロンコスにやってきた。現役を引退したわけではないが、ブロンコスのために一番良い形を模索していったところ、コーチ経験が一切ないにも関わらず、「気付いたらヘッドコーチになっていました」。
昇格を目指しているが、狭き門であるとともに、クラブライセンスの問題もある。「このチームの勝利を第一に考えています」という新川だが、B2やB1でプレーするチャンスを欲しているのも当然だ。U16日本代表としてともに戦った馬場雄大を筆頭に、同世代の活躍に「かなり刺激を受けていますし、置いて行かれているなという危機感もあります」というのも原動力となっている。「B3でバスケ人生を終わらせたくないですし、上のレベルでプレーしたいという目標があります。1年ずつステップアップしていきたいです」と覚悟を決め、チームとともに這い上がらねばならない。
まだはじまったばかりだが、すでに活躍を見せる「長島や佐藤、新川あたりは、昇格できなければ来シーズンは引き抜かれそうで怖いです」と泉ヘッドコーチは吐露する。しかし彼らの活躍も、選手たちのポテンシャルを引き出しているヘッドコーチの手腕である。選手たちの選択を尊重しつつ、「他のチームから声をかけられたとしても、今後もブロンコスの組織の一員になりたいと思えるようなクラブ作りを、この1シーズンを通して僕もがんばらなければいけないです」とコート上で戦うチームだけではなく、クラブ全体の成長を見据えていた。
今シーズンの目標は「全チームに勝つこと」であり、最初の1周目でクリアすべく照準を合わせる。B1経験者も多い話題の新規参入チームであるアルティーリ千葉や長崎ヴェルカは、天皇杯を含めて無敗を誇っている。「11月には両チームとの対戦があるので、僕らが最初に倒したい。1周目を終えたあとに、今シーズンのブロンコスは期待できる、と思ってもらえるような順位にいることを目指しています」という泉ヘッドコーチは、これまでの弱いイメージを払拭するチャレンジが続く。昨シーズン、B2だった群馬クレインサンダーズから移籍してきた新川は、「B3のレベルは正直言ってなめていました」。しかし1シーズンを戦い終え、今では「なめられている印象があるB3を変えたい」と自らの考えをあらためるとともに、まわりにも認められるように底上げしていく。
かつてのブロンコスを応援し、B3となったことで疎遠となったファンがいるならば、もう一度グリーンのウェアなどを身につけて、今シーズンの変化をその目で確かめていただきたい。共感できる部分があれば、1つでも新しい赤いウェアやグッズを手にすることで新たなブロンコスとの歴史が動きはじめる。それがチームを支え、選手たちのさらなる力を引き出すはずだ。
文・写真 泉誠一